"志摩の海に沈んだ母" 第2話
「町のもいくつか持っていると聞いていますが」
正斗は目を伏せた。
「あれは母が涯かけて貯めたものです。私たちがをせるものじゃありません」
警察はその言葉を記録した。だが、どこかに張り詰めたものをじていた。
数、警察は梅野のを訪ねた。浜辺から歩いて10分ほどの古い平だった。庭には女の具がきちんと並べられていた。
タンスの引きしからは古い通帳が数冊と現20万円ほどが見つかった。さらに番の引きしから、の登記簿謄本が入った古い封筒が見つかった。
町のの宅150坪。
町のの宅100坪。
町のの舗用50坪。
郊の畑1500坪。
1994の相で見ても、なくとも2億5000万円にはなる財産だった。
警察官は正斗に尋ねた。
「お母さんが、このを誰に譲ると言っていたことはありますか」
正斗は首を横に振った。
「そんな話はしていませんでした」
しかし、その言葉を完全に信じることはできなかった。
梅野と親しかった所の島俊子は、警察にな話をした。
彼女は浜のくでさなを営み、梅野とはい付きいだった。警察官が事を聞くと、俊子はしばらく迷ってからをいた。
「梅野さん、この頃ずいぶん悩んでいたんですよ」
「どんな悩みですか」
「息子さんたちのことです。男は京で子どもの学費が変だとおを頼み、次男は商売がうまくいかないとおを貸してくれと言ってきたそうです」
広告
俊子はため息をついた。
「でも、番ひどかったのは正斗さんです。堂で借を作って、母親にを売って返してくれとせがんでいました。5000万円だったか」
「梅野さんはどう答えたんですか」
「だめだと突っぱねたんです。あのはで子どもたちに同じように分けてやるものだから、勝には売れないと」
俊子は声を落とした。
「正斗さんは腹をてていましたよ。どうして自分だけ助けてくれない、兄たちは助けるのに、と鳴っていました」
警察はすぐに正斗を再び呼びした。
「借があるそうですね」
正斗は顔をこわばらせたまま答えた。
「はい。堂をやっていて、しこしらえてしまいました」
「いくらですか」
「5000万円くらいです」
「お母さんに助けを求めましたか」
「求めました。でも断られました。は売れないと。で兄たちと同じように分けなければいけないからと」
警察官は帳にき込みながら、さらに尋ねた。
「失踪のの晩も、その話で言い争ったんですか」
正斗は驚いたように顔をげた。
「誰がそんなことを」
「本当ですか」
「言い争いました。でも、ひどく争ったわけじゃありません。ただ、私がし声をげただけです」
正斗の額にはく汗が浮かんでいた。もわずかに震えていた。
その数、警察署に1本の話が入った。
話をかけてきたのは、浜にむ森孝志という50代の男性だった。
広告
梅野のから100メートルほどれた所にんでいた。
「714の夜です。梅野さんが消えるの晩に、おかしなものを聞いたんです」
警察官は姿勢を正した。
「続けてください」
「夜11頃、散歩していました。梅野さんののを通りかかった、から男の声が聞こえたんです」
「どんな声でしたか」
「っているようでした。『どうして自分だけだめなんだ。兄たちは全部かばったくせに』。そんな声でした」
森は言葉を詰まらせた。
「女の声も聞こえました。梅野さんの声のようでした。『おだけにはやれない。兄たちもいるのに』と言っていました」
「そのは」
「急に、どすんという音がしたんです。何かが倒れるような音でした」
警察はすぐに正斗を問い詰めた。
「714の夜11頃、お母さんのにいましたか」
「いいえ。930分にたと言ったじゃないですか」
「目撃者がいます。男の声を聞いたそうです」
正斗の顔は真っになった。
「私じゃありません」
しかし、男の健は京に、次男の信夫は阪にいた。2とも島へ戻れる状況ではなかった。
疑いは正斗に向いた。
だが、骸も、凶器も、確かな目撃者もなかった。森が聞いたのは声だけだった。
199410、事件は迷宮入りと分類された。
梅野は、正式にはで方になったものとして記録された。
は流れた。