"樹海の白いマスク" 第6話
性暴の痕跡も確認された。
病の井を見つめるは、ほとんど言葉を発しなかった。質問されても反応せず、ただ目をけたまま横たわっていた。精神科医は急性ストレス障害とショック状態を診断した。
2週の入院で、体の傷はしずつ処置された。染症には抗物質が投与され、骨折は固定された。だが、の傷は当てのしようがなかった。
警察は医師の許を得て、から事を聞いた。
は覚えていることを、途切れ途切れに語った。
い変形したマスク。
背のい男。
片言の本語。
い声。
洞窟。
灯油ランプ。
10の監禁と暴。
男の特徴は曖昧だった。顔は完全にマスクで隠れていた。暗く、ランプのだけだったため、目のも分からない。は暗く汚れていて、常に袋をしていた。指紋を残すこともなかった。
洞窟の所も分からなかった。
は縛られ、担がれ、暗のを運ばれた。逃げたも方向を確認できず、再び引き戻された。救助された所からどの方角に洞窟があるのか、彼女には説できなかった。
梨県警は規模な捜索を始した。
が発見された所をに半径5km。警察官、レンジャー、ボランティア、救助犬、サーマルカメラ付きヘリコプターが投入された。
しかし、洞窟は見つからなかった。
青ヶ原には、富士の溶岩流によって形成された無数の溶岩洞窟がある。
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登録されているものもあれば、図に載らないさな穴もある。密集したと複雑な形に隠され、正確な座標なしで1つを探し当てることは極めて難しい。
くは危険で、崩落し、が溜まり、が入れない所もあった。
警察は周辺民、公園職員、当くにいた観客、過に犯罪歴のある男性、岳帯に詳しい物、元の確かな滞者などを調べた。45の潜容疑者のリストが作られ、アリバイ確認と聞き込みがわれた。
の体や持ち物から採取されたDNAも照された。
しかし、本国内のデータベースに致する物はいなかった。犯が登録されていないだけなのか、国籍の物なのか、それとも証拠が分だったのかは分からない。インターポールを通じた確認でも成果はなかった。
1か、捜査はき詰まった。
「マスクの男」は、まるで森に溶けたように消えていた。
は8半ばに退院した。
京に戻り、ルームメイトの美幸が世話をしてくれた。最初のうちは、事を作り、病院への付き添いをし、夜にが叫んで目を覚ませば背をさすってくれた。
けれど、ので何かが壊れていた。
夜、眠れない。
眠れば悪を見る。
男性の音を聞くだけで息が苦しくなる。
医療用マスクを見ただけで、体が震え始める。
富士や森の写真を見ることもできない。
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青ヶ原という言葉を聞くだけで、洞窟のにおいと暗がよみがえった。
護師の仕事にも戻れなかった。
病院の消毒薬のにおい、械音、い照。そのすべてが、救助の検査と恐怖をいさせた。
半、はさな私クリニックで働こうとした。けれど、患者の男性がづいただけで体が固まり、診察の閉じた空に耐えられなかった。
美幸との関係もしずつ崩れていった。
美幸は支えようとした。だが、はりっぽくなり、突然泣き、理由もなく叫ぶことがあった。美幸も疲弊していった。
事件から1、美幸は引っ越した。
「ごめん。を見捨てたいわけじゃない。でも、私ももう限界なの」
は何も言えなかった。
アパートに1残された彼女は、さらにく孤していった。
はその、ほとんどになくなった。
べ物は配達で頼み、昼夜の区別も曖昧になった。テレビをつけたままぼんやり座り、酒で考を鈍らせるが増えた。
それでも、きようとはした。
精神科に通い、薬をみ、暴力被害者のためのグループセラピーにも参加した。だが、言葉にするほど傷はまり、誰かの体験を聞くたびに自分の記憶もよみがえった。
何度かとの関係を取り戻そうとした。
けれど、触れられることが怖かった。男性がづくだけで呼吸が乱れた。
親密さはではなく、危険の始まりにじられた。