"樹海の白いマスク" 第3話
指先が震えていた。それでもスイッチを押し、テントの壁へを向けた。
布越しに、が浮かびがった。
のだった。
背がく、肩幅が広い。
テントから約1mのところにっている。
は凍りついた。
の物も、ぴたりときを止めた。
10秒ほど、沈黙が続いた。
は震える声を抑えようとしながら叫んだ。
「誰ですか」
返事はなかった。
は再びきし、テントの入りので止まった。
は声をきくした。
「ちってください。防犯スプレーを持っています。助けを呼びます」
それは半分はったりだった。携帯話は圏だった。最寄りのもい。
から、くゆっくりした呼吸音が聞こえた。
次の瞬、テントのジッパーが側からき始めた。
じり、じり、とさな音をてていていく。
は防犯スプレーを握りしめた。
ジッパーが完全にいた。
入にっていたのは、暗いを着た男だった。
顔はいマスクで覆われていた。能面にも似ていたが、形は歪んでいた。目の部分だけ黒く切り込まれている。に持った懐灯のが、の顔をまぶしく照らした。
男は何も言わなかった。
は防犯スプレーを噴射した。
男はよろめき、く咳き込んだ。だが倒れなかった。次の瞬、テントのに踏み込み、の首をつかんだ。
い力だった。
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スプレーが落ちた。
は叫ぼうとした。腕を振り回し、爪をて、抵抗した。けれど男は彼女をに押さえつけ、袋をはめたでを塞いだ。
汗、、灯油のようなにおいがした。
男は顔をづけ、マスク越しのい声で言った。
「黙れ。騒ぐな。痛くなる」
その声を聞いた瞬、は本当の恐怖をった。
森の静けさは、助けが来ないことをしていた。
男はのを背で縛った。
ロープは荒く、首にい込んだ。も縛られ、はテープで塞がれた。はで必に呼吸したが、恐怖で息が浅くなり、胸が苦しくなった。
男は彼女を肩に担ぎげた。
世界が逆さまになった。
の界に、面、の根、夜空、黒い枝がばらばらに流れていった。彼女は方向を覚えようとした。歩数を数えようとした。だが恐怖と息苦しさで識がぼやけた。
どれほど運ばれたのか分からない。
30分かもしれない。1かもしれない。
男はをれ、密集したをんだ。川を渡り、斜面を登り、枝がの背やに当たった。皮膚が切れ、が引っかかった。
やがて男はち止まり、を面へろした。
面はたく湿っていた。とカビと岩のにおいがした。男はの縄をに解き、を無理やりたせると、どこかへ引きずった。
狭い入だった。
をくしなければ通れない。
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両側の壁は湿っていてたく、が触れるとざらついた。
溶岩洞窟。
富士の噴によって作られたの空だと、はぼんやり理解した。
に入ると、男は彼女をへ投げた。
肩をく打ち、痛みがった。テープ越しにうめき声が漏れた。
男は灯油ランプをつけた。
暗い黄のが、洞窟のを照らした。空は広くなかった。5m方ほど。井はく、壁は黒く湿り、ところどころに滴がっていた。
隅にはさな焚きの跡があり、くには寝袋、リュックサック、缶詰、空のボトル、汚れた布、ナイフ、灯油ランプが置かれていた。
は理解した。
これは偶然の襲撃ではない。
男はここをっていた。
ここにんでいた。
そして、誰かを連れてくる準備をしていた。
男はい歪んだマスク越しにを見ろしていた。汚れた黒いズボン、暗いジャケット、すり切れた登靴、黒い袋。肌の見える部分はほとんどない。
男はそばにしゃがみ、片言の本語で言った。
「抵抗するな。叫ぶな。楽になる。拒否すれば、とても痛くなる」
は必にを働かせようとした。
逃げはどこか。
相の特徴は何か。
自分がここにいることを誰かが気づくまで何かかるのか。
けれど、男は彼女の考を奪うように暴力を振るった。格を踏みにじる為を繰り返し、反抗すれば殴り、叫べばを塞いだ。
はの覚を失っていった。
洞窟のに昼夜の区別はなかった。ランプがつけばるくなり、消えれば完全なになった。