"龍神窟に眠る約束" 第5話
哲也はそのに崩れそうになった。
「ごめん。本当にごめん。でもは悪魔だ。お、本当に殺されるぞ」
美咲は何も答えなかった。
ただ背を向け、夜のへ歩きした。
もう引き返すことはできなかった。
宿に戻った美咲は、岩崎から渡された図を机に広げた。
最の図、20の流データ、龍神窟周辺の底形図。すべてをねわせると、公式の図には記されていない点が浮かびがった。
「ここは……洞窟の入りだ」
美咲は携帯話をに取った。
京の制作会社で世話になった太田班の番号を押す。
「太田班、私です。美咲です」
「おお、美咲くん。久しぶりじゃないか。どうした」
「急ぎでお願いがあります。探査チームを送っていただけませんか」
話の向こうで、太田班が息を呑む気配がした。
「探査?志摩の沖だろう。あそこは潮が速い。個な調査でかせるような所じゃない」
「費用はいくらかかっても構いません。責任は全部私が取ります」
「そんな、君にあるのか」
美咲は机のの貝殻を見つめた。
「母の保険があります。20、1度も使わずに残してきました」
い沈黙が流れた。
「それほどなことなんだな」
「はい。私のがかかっています」
太田班はく息を吐いた。
「分かった。の朝番でチームを連れてく」
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話を切ると、美咲は古びた貝殻をに取った。
「お母さん、もうしだけ待っててね」
翌朝7、港は慌ただしくき始めた。
専材を積んだ型両が2台到着し、潜チームの隊員たちがロボットや通信器をへ運び込んだ。甲板にはモニター、ケーブル、制御装置が次々と設置されていく。
太田班は美咲の顔を見て、眉をひそめた。
「もしてない顔だな」
「丈夫です」
美咲はそう答えたが、そのはし震えていた。
が港をれる、美咲は岸壁の方を見た。
くに哲也がっていた。
彼は何か言いたげにこちらを見ていたが、美咲は線を戻した。
1、探査は岩崎の図に記された域へ到着した。
太田班がGPS画面を確認した。
「座標致。ここだ。ロボット投入準備」
隊員たちがクレーンを使い、ロボットをへろそうとした。その瞬、無線から激しい雑音が鳴り響いた。
モニターが斉に乱れた。
「何だ、故障か」
「違います。部からの力妨害波です。誰かが図に通信を妨害しています」
その頃、龍神窟を見ろすの腹で、哲也は妨害装置のに座っていた。
両脇にはの部が2っていた。
「余計なことを考えるな。全部妨害しろ」
哲也は震えるで力レバーをげた。
探査のでは、太田班がすぐに指示をばした。
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「線に切り替える。ケーブルで直接つなげ」
「移範囲が制限されます」
「構わん。続だ」
ロボットは、太いケーブルを引きながらへ沈んでいった。
10メートル。
20メートル。
そして、モニターに黒い裂け目のような洞窟の入りが映った。
「龍神窟の裏だ」
美咲は息を呑んだ。
ロボットは慎にへんだ。
岩肌は鋭く、潮の流れは複雑だった。ライトのが届く範囲だけがく浮かびがり、その先はいに沈んでいた。
の腹で、哲也はヘッドフォン越しにの声を聞いていた。
美咲の声が混じった。
「もうし……ゆっくりめてください」
その声を聞いた瞬、哲也の目に涙が浮かんだ。
幼い頃、緒に港で遊んだ美咲。
母を失って泣いていた美咲。
その美咲を、今、自分がまた裏切っている。
「もうやめろ」
哲也は突然ちがった。
の部が肩をつかもうとしたが、哲也はそれを突きばした。そして妨害装置の源を叩きつけるように切った。
その瞬、探査の通信が回復した。
「通信、復旧しました!」
太田班が叫んだ。
モニターの映像が鮮になった。
そして次の瞬、画面に広い空が現れた。
「エアポケットだ」
ロボットが面に浮した。
ライトが洞窟内部を照らした。
美咲は息を止めた。
岩のに、5つの遺骨が並ぶように横たわっていた。
破れた潜。
朽ちた浮き樽。
そして、20誰にも見つけられなかった、母たちの姿。
「お母さん……」
美咲はそのに崩れ落ちた。