"千船の祝い膳" 第4話
「先、なぜ先が扉のに」
宴会の扉がきました。
から美佐子さんが顔をしました。
「何かありましたか?」
そして、総料理が私の元に膝をついているのを見て、表を固めました。
絵里奈さんもろから顔をしました。華やかな訪問着を着て、髪も綺麗に結われています。その顔から、すっとが引いていきました。
真司もっていました。
「母さん……」
榊原さんはゆっくりちがりました。それでも布巾は、両で切に持ったままでした。
榊原さんは宴会のに向かって、静かに言いました。
「この方は原千代乃先。料理名、千。祝い膳の世界で、この方の教えを受けていない料理の方がないくらいです」
絵里奈さんの唇が、しきました。
榊原さんは続けました。
「本おしするおい初めの祝い膳も、先が昔まとめられた献の考え方を元にしています。鯛の焼き、赤飯の蒸し加減、吸い物の温度、器の向き。その1つ1つに、先の教えがあります」
宴会のが静まり返りました。
さっきまで笑っていた親族たちも、箸を持つを止めていました。
着物姿の若い女性スタッフが、私にくをげました。
「じげず、変失礼いたしました」
美佐子さんが、かすれた声で言いました。
「でも、こちらは族の席で……」
榊原さんは彼女を静かに見ました。
広告
「族の席とは、誰かをにたせてえるものではありません」
その声はく、よく通りました。
「この席をっぽくしているのは、古い着物ではありません。を扉のにたせて平気でいるです」
絵里奈さんは何も言えませんでした。
真司は私を見ていました。初めてらないを見るような顔でした。
そうでしょう。
私は真司に、自分の仕事の話をあまりしてきませんでした。
あの子にとって私は、いつも厨にいて帰りが遅く、のに汁の匂いを持ち帰る母でした。賞状も、雑誌も、料理会の招待も、見せたことがありません。
見せたら、寂しいいをさせた言い訳のようになる気がしたからです。
私はただ息子に向かって言いました。
「真司、赤ちゃんに会ってもいいかしら」
真司はすぐに頷きました。
「ああ、もちろん。もちろんだよ」
その言葉が、し遅かったといました。
私は宴会に入りました。
部の央には、祝い膳がえられていました。鯛は美しく焼かれ、赤飯のも柔らかく、吸い物の椀には季節のりがありました。
いい膳でした。
派すぎず、静かで、子供の未来を願う形になっていました。
私はそれを見て、榊原さんが良い料理になったのだといました。
孫は母親に抱かれていました。頬が丸く、目はまだ眠たそうでした。さなが、空を掴むようにいています。
広告
私はづきすぎないように、し距を置いて見ました。
「きくなりましたね」
それだけ言いました。
絵里奈さんは俯いていました。
私は袋からさな箱をしました。には祝い箸が入っています。それを膳のそばに置きました。
「べ物に困らず、優しいをる子になりますように」
声がし震えました。
孫には何の罪もありません。この子が将来、今のことをる必もありません。
私はそういました。
絵里奈さんがさく言いました。
「お義母さん、私、そんなつもりじゃ……」
私は彼女を見ました。
「そんなつもりがなくても、は傷つきます」
美佐子さんが慌てて言いました。
「私たちはただ、席の雰囲気を考えて……」
「雰囲気を守るために、をにすのですか」
私は静かに聞きました。
美佐子さんは黙りました。
真司がをきました。
「母さん、今はせっかくのお祝いだから、このまま緒に……」
私は息子の言葉を最まで聞いてから、首を横に振りました。
「だからこそ、扉のにたせてはいけなかったのよ」
真司の顔が歪みました。
私は鳴りませんでした。責めてることもしませんでした。ただ、ので何かが静かに決まっていました。
私は榊原さんに向き直りました。
「榊原さん、良いお膳ですね」
彼はくをげました。
「先にそう言っていただけるなら、これ以ありません」
私は微笑みました。
「でも、私は今は帰ります」
絵里奈さんが顔をげました。