"地下室に消えた母" 第6話
美紀が失踪してから10が過ぎようとしていた。
お盆がづくたびに、裕の胸はくなった。あの、バスターミナルで美紀が「すぐ戻るから」と笑ってった姿が、何度もにてきた。
健は10歳になり、以より落ち着いたになっていた。けれど、母親のことになると今でも表を曇らせた。
「父さん、お母さんはお盆にも帰ってこないの?」
ある、健がぽつりと尋ねた。
裕は答えに詰まった。
「母さんは……本当にくにいるんだ」
それしか言えなかった。
お盆の、文子は伊豆から来て、を込めて料理を作った。おはぎ、煮物、ぷら。太郎も緒に来て、孫と久しぶりに卓を囲んだ。
「健、伝ってくれるかい」
「うん。おばあちゃん」
文子は健と緒におはぎを作りながら、を慰めようとした。けれど、美紀がここにいればどれほどよかっただろうといういは消えなかった。
夕方、拓也が挨拶に来た。
「お盆、いかがお過ごしですか。何か必なものがあったら言ってください」
文子は優しく言った。
「拓也さんも1で寂しいでしょう。よかったら緒にべていきませんか」
「いえ、丈夫です。祖母に会いに故郷へ帰らないといけないので」
拓也はそう言って、し慌てたように帰っていった。
その夜、裕は眠れず、窓際にっていた。ふと隣の拓也のを見ると、かりがついていた。
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「祖母に会いにったはずじゃ……」
裕は眉をひそめた。
さらに目を凝らすと、窓の向こうにが見えた。それは拓也よりも柄で、女性のようなシルエットだった。
裕は目をこすった。
しかし次の瞬、そのは消えた。
「見違いか」
そうおうとしたが、違は消えなかった。
翌朝、裕は拓也に尋ねた。
「拓也さん、昨夜はにいましたか。かりがついていたようですが」
拓也は瞬だけ表をこわばらせた。
「あ、はい。予定が変わったんです。祖母の体調が悪いと連絡があって、結局かなくなりました」
「そうでしたか」
裕はそれ以聞かなかった。だが、拓也の慌てた様子がに残った。
数、裕は健と散歩にかけた。
歩きながら、さりげなく尋ねた。
「健、拓也さんのに誰かのがいるように見えたことはないかい」
健の表がこわばった。
「分からないよ」
その反応を見て、裕は確信にいものを覚えた。
「本当に、誰かに会ったことはないのか」
「ないよ」
健はそう答えたが、声はさかった。
その夜、裕は眠れなかった。
健の奇妙な反応。拓也の自然な説。隣の窓に見えた女性の。
すべてが、どこかでつながっているような気がした。
裕は数、隣のを注く観察した。
そしてある夜、決定な瞬を目撃した。
拓也がした、2階の窓に女性がった。
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カーテンの隙からを見ている。その顔は痩せていたが、裕の記憶のにある美紀となった。
裕の臓が激しく打った。
「まさか……」
女性は窓のを見ていたが、裕と目がったように見えた瞬、慌てて姿を消した。
裕はそのにち尽くした。
10、探し続けた妻が、すぐ隣のにいる。
そんなことがあり得るのか。
けれど、あのシルエット、あの目。
美紀に違いない。
裕はすぐにでも拓也のへ駆け込みたかった。だが、のままけば危険だ。もし拓也が何かを隠しているのなら、慎にしなければならない。
その夜、裕はを決めた。
真実を確かめる。
何があっても、美紀を取り戻す。
夜11を過ぎた頃、拓也のは静まり返っていた。
かりは消え、からは何の音も聞こえない。裕は族に何も告げず、そっと自宅をた。には懐灯と携帯話を握っていた。
隣の裏へ回ると、幸いにも裏庭の窓がしいていた。
裕は震えるで窓を押しけた。臓が張り裂けそうだった。それでも、ここで引き返すわけにはいかなかった。
のは暗く、静かだった。
リビング、台所、廊。誰もいない。
その、台所の奥にあるさなドアが目に入った。
への扉だった。
裕は健が以、について何度も尋ねていたことをいした。
「ここなのか」
裕はゆっくり扉をけ、階段をりた。
湿った空気がを刺した。