"地下室に消えた母" 第2話
裕は待の計を何度も見げた。々は次々とバスの乗りへ向かい、発をらせるアナウンスが流れている。腕のの健がむずかり始め、さな声で泣いた。
「丈夫だよ。ママはすぐ戻ってくるから」
裕は健を揺らしながら、入の方を何度も見た。だが、混みのに美紀の姿はなかった。
バスの発まで残り10分を切ったところで、裕は待つことを諦めた。
「何かあったのかもしれない」
その考えがをよぎった瞬、背にたい汗が流れた。
裕は健を抱き直し、きな鞄を肩にかけてターミナルのへた。へ戻るを急いだ。もしかしたら、の途で美紀に会えるかもしれない。そう自分に言い聞かせながら、にをんだ。
しかし、までので美紀に会うことはなかった。
はいつものように静かだった。の気配はなく、庭のコスモスだけがに揺れていた。
裕はをけ、庭を通り、玄関のドアをけた。
「美紀」
返事はなかった。
のは自然なほど静かだった。台所にも、居にも、廊にも、美紀の姿はない。裕は健をリビングのソファにそっと寝かせ、を見て回った。
羊羹を置いていた戸棚をけると、そこは空だった。
美紀が羊羹を持ちしたことは違いない。
では、なぜ戻ってこなかったのか。
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吉な予が、裕の胸ので急速に膨らんでいった。
「美紀。どこにいるんだ」
寝、浴、押し入れ、庭。隅々まで探しても、美紀はいなかった。
裕は再び健を抱きげ、へびした。健はをじ取ったのか、がついたように泣き始めた。
「ママ、ママ」
まだはっきりとした言葉にはならない。けれど、その泣き声は確かに母親を求めていた。
「健、ママはすぐ帰ってくる。父さんが探すから」
裕は息子をあやしながら、を何度もき来した。ターミナルからまでは1本である。に迷うはずがない。事故に遭ったのなら、誰かが気づくはずだった。
その、隣ののがき、拓也がてきた。
「あれ、田さん。まだ発していなかったんですか。バスの、もう過ぎたんじゃないですか」
裕は息を切らしながらづいた。
「拓也さん、美紀が……に羊羹を取りに来たまま、いなくなってしまったんです」
「え、いなくなったって、どういうことですか」
拓也の顔には驚きが浮かんでいた。だが裕は、その表の奥にほんのし自然なものをじた。けれど、そのは考える余裕などなかった。
「ターミナルからに戻る途で、見かけませんでしたか」
「いえ。私はずっとにいましたけど……いつ頃ですか」
「1くらいです。羊羹を取って、すぐ戻ると言っていたんですが」
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拓也は顎にを当て、考えるふりをした。
「じゃあ、緒に探しましょう。この辺りはそんなに広くないですし、すぐ見つかりますよ」
裕はその申しにすがるように頷いた。
2は所を探し回った。の角、商の、ターミナルまでの。に聞いて回ったが、美紀を見たという者はいなかった。
まるで空気のに溶けたように、美紀の姿は消えていた。
夕方になり、健は空腹でさらに激しく泣きした。裕は仕方なくに戻り、震えるでミルクを作った。
「配しないでください。きっとどこかから連絡が来ますよ」
拓也はそう慰めた。
しかし裕のは消えなかった。
美紀は、連絡もなく姿を消すようなではない。ましてや、1歳の息子を置いてどこかへくはずがない。
夜になり、裕は警察へ通報した。
だが、警察官の反応は鈍かった。
「が1連絡がつかないくらいでは、まだ何とも言えませんね。友のに寄っているのかもしれませんし」
「違います。美紀は絶対にそんなじゃありません。赤ん坊を置いて、どこかへくようなじゃないんです」
裕は声を荒げたが、警察官は刻には受け止めなかった。
結局、そのは届けを受理するだけだった。
に戻った裕は、何もできなかった。健は夜通し泣き続けた。
「ママ、ママ」
その声が静まり返ったのに響くたびに、裕の胸は引き裂かれた。
美紀はどこへってしまったのか。
その答えは、のすぐ隣に隠されていた。