"最後に座った妻" 第7話
健はで仕事をしており、差のせいでつながるまでがかかった。
「お父さん?」
「お母さんのこと、聞いたか」
「うん。理恵から聞いた」
話の向こうの声は、し遅れて届いた。そのわずかな遅れが、距を層くじさせた。
「お父さん、今どんな気持ち?」
勝則はしばらく黙った。
「分からん」
「ってる?」
「ってない。ただ……何も分からん」
健も黙った。
やがて、静かに尋ねた。
「お父さんって、お母さんに謝の言葉をかけたことあった?」
勝則は反射に言い返しそうになった。
族のために35働いてきた。
それが謝の代わりだとっていた。
けれど、にすに何かが引っかかった。
「働いてきた。それが答えだとってた」
話の向こうで、健はさく息を吐いた。
「お母さんには、伝わってなかったとう」
責める調子ではなかった。
でも、その言はじわりといところまで届いた。
話を切った、勝則は部を見回した。
3で、は驚くほど散らかっていた。
脱いだが脱いだ所にある。読み終えた聞がに落ちている。使った湯みがテーブルに残っている。ティッシュの箱が空になっても、そのままだった。
子がいた頃は、気づかないうちに全部元に戻っていた。
勝則はそれを、そういうなのだとっていた。
数、弁護士事務所の名が印刷された封筒が届いた。
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には、婚協議と財産分与に関する類が入っていた。
勝則はテーブルに広げ、しばらく見つめた。
文字は読める。
だが、がに入ってこない。
彼は類をそっと裏返した。
まだ向きえなかった。
その夜、勝則の兄が様子を見に来た。
兄は玄関を入るなり、散らかった部を通り見た。何も言わなかった。ただ台所へち、蔵庫にあったもので簡単な事を作った。
2で向かいってべた。
兄が箸を置いて、静かに聞いた。
「子さんに、1度でもありがとうと言ったことがあったか」
勝則は答えなかった。
兄は続けた。
「自分は悪くないとってるか?」
勝則はく黙った。
「ってた」
ようやくをいた。
「でも今は、分からなくなった」
兄は何も言わなかった。
ただべ終わった皿を持ち、台所へ向かった。
そのろ姿を見ながら、勝則は初めて気づいた。
誰かがそこにいてくれること。
誰かがいてくれること。
それが、どれほど当たりではないか。
67かけて、今夜初めて腹の底から分かった気がした。
子のいない活は、勝則が像していたよりはるかに厳しかった。
最初の1週は、腹たしさが勝っていた。
なぜ急にていったのか。
なぜ相談しなかったのか。
なぜ35も緒にいて、最に3のだけなのか。
そう考えるたびに、胸の奥がざらついた。
だが、りはく続かなかった。
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活が、る余裕を奪っていった。
朝起きても、事はない。
洗濯物はたまり、ゴミは増え、呂には垢が目ち始めた。掃除をかけようとしても、どこから始めればいいのか分からない。台所の排の掃除など、考えたこともなかった。
蔵庫のはすぐに空になった。
スーパーへった。
売りに並ぶ材を見ても、何を買えばいいのか分からない。魚を見ても、焼けばいいのか煮ればいいのか分からない。野菜を見ても、どれがどれくらい持ちするのか分からない。
結局、惣菜と弁当を買った。
レジの袋をげて帰る途、勝則はふと周りを見た。
買い物袋を持った女性たちが、当たりのように歩いている。誰かと献の話をしながら、値段を見比べながら、族の卓を考えながら品物を選んでいる。
子も、35こうしていたのだろうか。
何を作るか。
いくらで買うか。
栄養はりるか。
残り物をどう使うか。
自分はそのつも考えず、された料理に「昨と同じじゃないか」と言っていた。
勝則は袋を握るに力を込めた。
に戻ると、弁当をテーブルに置いた。
テレビをつけた。
いつもなら、子が台所で何かをしている音がろにあった。今はテレビの音だけが妙にきい。
誰も「お茶いる?」と聞かない。
誰も「お呂沸いたわよ」と声をかけない。
誰も、そこにいない。
数、理恵が様子を見に来た。
玄関をけた瞬、理恵はの匂いに気づいたようだった。