"消えた一人分の席" 第2話
「毎、寄りのの世話ばかりで、よく続きましたねぇ。私なら絶対に無理だ」
由が、その言葉にすぐ反応した。
「本当ですよね。私、お母さんの仕事って誰でもできる単純作業だとってました」
その瞬、テーブルから笑い声が漏れた。
由の妹夫婦まで、困ったように笑っている。
理子は茶碗を持ったまま、かなかった。
。
夜勤けで眠れないまま、事をしたもあった。患者に暴言を吐かれ、理尽に鳴られ、それでもをげ続けた。
認症の患者にを握られ、「ありがとう」と泣かれたこともある。
取りの夜、族の代わりに最期を見届けたこともある。
そのすべてを、今こので“誰でもできる仕事”と笑われている。
誠がい声で言った。
「理子の仕事を馬鹿にするな」
しかし由は、まるで聞こえていないように肩をすくめた。
「だって事実でしょう? 医者とか弁護士ならともかく、介護士って特別な資格がなくてもできるイメージですし」
「由」
裕也が声で名を呼んだ。
だが止める気配はない。
むしろ、を壊さないよう曖昧に笑っているだけだった。
理子は、その息子の顔を見た。
幼い頃、をした裕也を背負って病院へった夜をいす。学受験の、駅まで弁当を届けた朝をいす。
その息子が今、自分の妻に母親を侮辱されても、苦笑いを浮かべるだけなのだ。
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「ママ」
突然、幼い声が響いた。
歳の陽太だった。
「なんで、おばあちゃん、あっちでべてるの?」
瞬、空気が止まる。
由は寿司をに運びながら、軽い調子で答えた。
「おばあちゃんは、族じゃないからよ」
理子のが止まった。
陽太は首をかしげた。
「族じゃないの?」
「そう。のだから、あっち」
その言葉が、胸の奥にく刺さった。
。
働きながら息子を育て、援助を続け、それでもなお、自分は“の”なのか。
誠が補助子ので拳を握りしめている。
由の妹が、さく笑った。
「なんか、おじいさんとおばあさん、空気読めてないじですよね」
また笑い声ががった。
理子は、ゆっくりと米を茶碗に戻した。
もう、もべる気になれなかった。
そしてその、由が満げな表でちがった。
「皆さん、今は切なお話があるんです」
理子は、静かに顔をげた。
由の目は、完全に勝者の目だった。
由はワイングラスをにしたまま、ゆっくりと周囲を見渡した。
「これからは、私の実をに族関係を築いていこうとっています」
その言葉に、由の両親が満そうに頷く。
「ですので、お父さん、お母さん」
由は理子と誠を見た。
「今、親族の集まりには来ないでください」
理子は、瞬、自分のを疑った。
誠が子からを乗りす。
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「……何を言ってるんだ」
しかし、そのに裕也がをいた。
「母さん、父さん、悪いけど……これからは由の族と仲良くしていきたいんだ」
理子は息子を見つめた。
裕也は線を逸らしたまま続ける。
「だから、その……し距を置きたい」
「距を置く?」
誠の声がくなる。
裕也は苦しそうに息を吐いた。
「するに、もう来ないでほしいんだよ」
その瞬、由が言葉を継いだ。
「お荷物はいりませんから」
部の空気が止まった。
誠の顔が、気に真っ赤になる。
「理子さん、それはどういうだ!」
普段温な誠が鳴った。
「俺たちがどれだけこの族のために尽くしてきたとってる!」
誠はちがった。
「理子は働いて裕也を学までした! こののだって俺たちがしたんだぞ!」
由は眉をひそめた。
「過の話を持ちされても困ります」
「何だと?」
「私たちは未来の話をしてるんです」
「未来?」
誠が鳴る。
「おたちに未来があるのは誰のおかげだとってる!」
そのだった。
理子が、そっと誠の腕にを置いた。
「精さん、もういいの」
誠が振り返る。
理子の表は、議なほど静かだった。
りではない。
しみでもない。
何かを完全に諦めたような、え切った静けさだった。
理子は由を見つめ、ゆっくり微笑んだ。
「そうですか。
わかりました」
由が戸惑ったように目を瞬かせる。
泣きつくか、鳴り返すか。
そんな反応を期待していたのだろう。