"母を逃がした電話" 第9話
写真を撮るも、「なんで笑わなきゃいかんのだ」と嫌な顔をしていました。
でも、その器用さがたまらなくしかった。
私はをわせました。
「お父さん、ありがとうね。あなたが全部守ってくれたのね。も、おも、優も、それから私のことも」
目を閉じると、涙がこぼれました。
しい涙ではありませんでした。
い戦いがようやく終わったのです。
がけて1、優は世田の実から歩いて10分ほどの所にマンションを借りました。会社にも事を説し、張を減らす方向で調してもらったそうです。
週末になると、優は実に顔をしました。
最初の頃は毎のように来ようとしましたが、私は叱りました。
「あなた、毎来なくていいのよ。私はもう丈夫なんだから。あなたにはあなたの活があるでしょう」
「でも母さん」
「週末に来てくれればいいの。それで分」
そう言うと、優はし困った顔で笑いました。
私の体もしずつ戻っていきました。事をきちんと取れるようになり、頬にもし肉が戻りました。
佐々の子さんは週に1度お茶をみに来てくれるようになりました。田辺さんとの話も再しました。
「節子さん、本当に元気になったわね」
子さんが涙ぐみながら言うと、私は照れくさくなりました。
「げさよ、子さん。
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ちょっと痩せただけだったんだから」
「ちょっとじゃなかったでしょう」
「ちょっとよ。ほら、もうおまんじゅうもべられるし」
2で笑いました。
半には像もできなかった、何気ない午のひとときでした。
2のある曜の朝。
の空の、私と優は縁側に座ってお茶をんでいました。庭の梅が、さなつぼみをつけ始めています。正雄が植えた梅のです。
「母さん」
「うん?」
「あの半、本当に辛かっただろう。俺がもっとく気づいていれば……」
優は何度も言おうとして、ずっとみ込んできた言葉をようやくにしました。
「仕事にかまけて、美の言うことを鵜呑みにして、母さんを1にした。本当にごめん」
私は湯呑みを膝に置きました。
「優、あなたが悪いんじゃないのよ」
「でも」
「あの子たちの嘘は本当にだった。私だって最初は信じていたんだから。お母様のためですって、あの顔で言われたら信じるわよ」
私は庭の梅を見つめました。
「あなたが騙されたのは、あなたが優しいからよ。それに、あなたは気づいたでしょう。遅かったかもしれないけれど、ちゃんと気づいて、ちゃんといてくれた。あの夜の話がなかったら、今頃どうなっていたか」
優は黙っていました。
私はお茶をみました。
「お父さんも、きっとっていないわよ。あなたのことだって」
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「親父が?」
「ええ。お父さんの方が、よっぽど器用だったんだから。きているは何も言わないで、んでから全部仕込んであったなんてね」
優はさく笑いました。
「確かに、親父らしいな」
「でしょう」
私は微笑みました。
の差しが縁側に柔らかく差していました。庭の梅のつぼみはまだいけれど、あと2週もすればいを咲かせるでしょう。
やがて桜が来て、陽が来て、犀の季節がまた巡ってきます。
私は75きてきました。
いいことも、悪いこともありました。
あの半はで番辛いでした。
けれど、番くのことを教えてくれたでもありました。
は何歳になっても戦える。
何歳になっても、自分のを取り戻せる。
私は75歳で、そのことをりました。
「母さん、おかわりいる?」
優が急須を持ってちがりました。
「いただくわ」
私は湯呑みを差ししました。
湯気の向こうに、庭の梅が見えました。
もうすぐが来ます。
私はもう、誰にも閉じ込められません。
息子がいます。
き夫のがあります。
そして何より、自分自のでつさがあります。
取り戻したこので、私はこれからもきていきます。
静かに、けれど確かに。
私のとして。