"母を逃がした電話" 第6話
むしろ記憶力や注力は同代の平均を回っています」
正式な診断が作成されました。
「認症の所見なし」
それは、美たちが作った偽りを覆すきな証拠になりました。
病院をた、私は田法律事務所へ向かいました。
千代田区の古いビルの4階にある事務所は、派さのない実直な空でした。本棚には法律がぎっしり並び、机のには理された類が積まれています。
「節子さん、ここにいるは全です。着替えや用品は事務員のが買いにきますから、まずは休んでください」
事務所の奥にはさな仮眠がありました。
鍵のかかる部。
好きなにけられるドア。
監のない空。
それだけで、私には国のようにじられました。
その夜、優からテレビ話がかかってきました。田先のタブレットを借りて通話しました。
画面に映る息子の顔を見た瞬、また涙がました。
「優、元気そうね」
「母さんこそ……痩せたな」
優は唇を噛んでいました。
「ごめん。気づくのが遅くなって」
「いいのよ。あなたが話をくれた。それだけで分」
「帰る。それまで田先のところにいてくれ」
「分かってるわ。それより、あなた仕事は丈夫なの?」
「交渉はまとまった。会社にも事は話す」
優の目は赤くなっていました。
「母さん、俺が全部やる。
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もう何も配しなくていい」
通話を終えた、田先が私のに座りました。
「節子さん、1つお見せしたいものがあります」
田先は事務所の奥にある庫をけ、茶い封筒を取りしました。表には、正雄の跡で「田正雄」とかれていました。
「これは正雄さんが、私に預けたものです。自分がんだ、節子さんに何か問題が起きたら、そのに渡してくれと」
封筒のには、2つのものが入っていました。
1つは公正証遺言の正本。
もう1つは、さな鍵でした。
私はその鍵に見覚えがありました。
「の貸庫の鍵……?」
「はい。正雄さんは本に貸庫を持っていました」
私は初めてりました。
田先は説を続けました。
「正雄さんの遺言には、自宅を含む産について信託の設定が記されています。簡単に言えば、この産は節子さんと優君以の第者には譲渡も売却もできない仕組みです。たとえ成見がったとしても、信託の条件を変えることは極めて困難です」
私は目を見きました。
「正雄がそこまで……」
「はい。そして貸庫のには、産の登記簿の原本、株式の証、命保険の証券など、類がすべて保管されています。美さんたちがご自宅で探しても見つからなかったはずです。最初からにしてあったのですから」
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私は封筒を胸に抱き、目を閉じました。
正雄は、しているなんて度も言わないでした。記を忘れることもありました。けれど、私が邪をひけば黙って薬局へり、困らないように先回りしてを打ってくれるでした。
言葉では言わない。
その代わり、全部やってくれていた。
「お父さん……ありがとう」
声にならない声で呟きました。
その夜、田先は机に向かい、法続きを理しました。
庭裁判所に対して、成見申してへの反論を提すること。
に対して、正引きしの正式調査を依頼すること。
認症の偽診断を作成した黒田医師への告発を野に入れること。
祝井幸、、美の3名に対する刑事告訴の準備。
すべてが、静かにき始めていました。
方、私が消えた翌朝、世田のでは騒ぎになっていました。
美が私の部をけると、布団は畳まれ、部はもぬけの殻でした。
「お母様?」
洗面所にも、呂にも、庭にもいません。
「お母様がいないの!」
美の声に、と幸が駆け寄りました。
3はを探し回りました。押し入れ、物置、ベランダ、裏庭。
どこにもいません。
裏の鍵がいていました。
幸は舌打ちしました。
「ここからたのか」
は青ざめながら言いました。
「認症の徘徊ってことにすればいいわ。
警察に届けましょう」
美は優にも話しました。
「あなた、変なの。お母様がいなくなったの。認症で夜に徘徊したのかもしれない」