"崖下で眠っていた三年" 第4話
フロントガラスはく曇り、で覆われている。
彼は袋をはめたで、運転席の窓をこすった。曇りがしだけ取れた。田さんは顔をづけ、内をのぞき込んだ。
その瞬、彼は鳴をげ、ろへ尻もちをついた。
運転席と助席に、の形をした骨化した遺体が2体残っていた。
田さんは転げるように斜面を登り、息を切らしながらへ戻った。は震え、元もふらついていた。彼はくの民までり、警察へ通報した。
午4を過ぎる頃、静かだったはサイレンの音に包まれた。刑事、鑑識、科学捜査隊が次々に現へ到着した。
現はから見えない角にあり、ロープなしでは接できないほど危険だった。警察はを封鎖し、型クレーンを配した。
両ナンバーが照会された、無線の向こうの声が瞬止まった。
「班、これ……3のペンション失踪事件の配両です。ケンジ所のトヨタ・マークIIです」
そのにいた刑事たちの顔がこわばった。
3、倫の逃避として扱われた2。世から裏切り者と呼ばれたユミとケンジ。
彼らは逃げていなかった。
3、この崖ので、誰にも見つけられずに眠っていたのだ。
が暮れる頃、両はクレーンで引きげられた。錆びた体から砂と枯れ葉が落ち、い腐敗臭が漂った。
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ドアがこじけられると、内には当の旅カバンが部座席に残っていた。財布と分証もそのままだった。
失踪、持ちったとされたものは、すべて内にあった。
そして鑑識の声が現の空気をさらに凍らせた。
「ギアがニュートラルに入っています」
捜査班が運転席をのぞき込んだ。変速レバーは、ドライブではなくNの位置にあった。キーは差し込まれているが、エンジンは切られていた。
通常のの転落なら、ギアはドライブに入っているはずだった。
つまり、このは自して落ちたのではない。
誰かがエンジンを切ったを、崖へ押し落とした能性があった。
両が回収された翌、遺体は司法解剖へ回された。
解剖の空気はたく、蛍灯のいが、骨化した蓋骨を無質に照らしていた。3というは肉を失わせ、表も声も奪っていた。だが骨だけは、最の瞬に何が起きたのかを沈黙ので語っていた。
解剖医は蓋骨を慎に持ちげ、損傷部分をライトで照らした。
「直接の因は部損傷と見ていいでしょう」
報告を受けた捜査班は、無言でメモを取った。
「鈍くてい物体でく殴られた痕跡があります。ハンマー、、あるいはそれにいものです」
運転席の男性遺体、つまりケンジの蓋骨の部には、い力を受けた痕跡があった。
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助席の女性遺体、ユミにも同じような損傷が確認された。
転落事故による損傷だけでは説がつかない。
さらに内からは、ルミノール反応によって血液の痕跡も確認された。3というでくは消えていたが、シートの奥くには、かつてそこに血が染み込んでいた証拠が残っていた。
事故ではなかった。
逃避でもなかった。
2は殺害され、その、ごと崖へ遺棄された能性がかった。
しかし、決定だったのはそれだけではなかった。
解剖医は、胃の内容物に関する報告を差しした。そこには、アルコール成分と物の残留物が記録されていた。消化はほとんどんでいなかった。
「最に事をしてから、くても2以内にしたと考えられます」
その言葉に、捜査班のが止まった。
3、たかしと稽古はこう証言していた。
4は夜12頃まで酒をみ、それぞれの部に戻って寝た。翌朝7に起きると、ユミとケンジが消えていた。
だが解剖結果は、それを否定していた。
ユミとケンジは、朝方にでてったのではない。宴会が終わった直、あるいはに就いてもない夜のうちにしていた。
推定刻は、夜12から夜2の。
その、では台の豪が根を叩き、渓流の音がすべてをかき消していた。
捜査班は報告を閉じ、く言った。
「朝起きたらいなかった、という証言は嘘だった能性がある」