"旅行中の夫に告げなかった葬儀" 第1話
「しつこく話をかけてきて、なんなんだよ」
話がつながった瞬、夫の優斗は鳴るように言った。
私はスマホを握りしめたまま、廊でを止めた。胸の奥が嫌な音をてる。それでも、今はを抑えなければならなかった。
「優斗、聞いて。それどころじゃないの。お義父さんが――」
「どうせ、俺と母さんがおらを置いて旅に来たから、腹いせだろ? 本当に性格の悪い奴だな」
優斗は私の言葉を最まで聞かなかった。
私は息を吸い直した。
「違うの。お願いだから、ちゃんと聞いて」
「うるさい。おのくだらない話なんか聞く価値もないんだよ。俺は母さんとの旅を楽しんでるんだ。邪魔するな」
受話器の向こうで、義母の声がなった。
「せっかくの族入らずの旅を邪魔するなんて、本当に嫌な嫁ね。先のい老の楽しみを台無しにするつもりなのかしら」
その言葉を聞いた瞬、私は唇を噛んだ。
義父がくなった。
その事実を伝えなければならないのに、2は私を責めることしか考えていなかった。
「母さん、ごめん。もう携帯の源は切っておくから」
優斗は義母に向かってそう言ったあと、再び私に吐き捨てるように言った。
「そういうことだから、もう邪魔するなよ。これ以しつこくするなら、帰国してから婚するからな」
通話は方に切れた。
広告
私はすぐにかけ直した。だが、何度かけてもつながらない。メッセージも送った。けれど既読にはならなかった。
私はスマホの画面を見つめたまま、しばらくけなかった。
りが湧いた。
それ以に、胸の奥で何かが静かに固まっていった。
もういい。
伝えようとしても聞かなかったのは、あのたちだ。
私はスマホをバッグに入れ、の支度をえた。そして、義姉の菜さんが待つ義実へ向かった。
私の名は、あゆみ。36歳の兼業主婦だ。
宅でSEの仕事をしながら、6歳の夫・優斗と、4歳になる息子のと3で暮らしていた。
優斗とりったのは、友の紹介だった。
初めて会った、私は緊張してうまく話せなかった。そんな私に、優斗はさりげなくを差しし、笑って言った。
「今は来てくれてありがとう。何でも頼んでよ。俺のおごりだから」
「ありがとうございます」
その気遣いが、当の私にはとても頼もしく見えた。
交際が始まってからも、優斗はよく私を気にかけてくれた。デートの帰り、私が疲れていると歩幅をわせてくれたし、選びにも文句を言わなかった。
ただ、気になることが1つあった。
「今、このあとどうする? どこかおにく?」
私がそう聞くと、優斗はし申し訳なさそうに笑った。
「ごめん。今は母さんに用事を頼まれてるんだ。
広告
母さんも父さんもを取って、できないことが増えててさ」
「そっか。なら仕方ないね」
そんなことが何度もあった。
けれど私は、それを悪く受け取らなかった。むしろ、親を事にする優しいなのだとっていた。
交際は順調にみ、やがて結婚の話がた。優斗の実へ挨拶にった、私はいがけない物と再会した。
「え、菜さん?」
「優斗が結婚するを連れてくるっていうから、どんなかとったら、あゆみちゃんだったのね」
優斗の姉である菜さんは、私が以働いていた会社の先輩だった。
菜さんは驚きながらも、嬉しそうに私のを握った。
「こんな偶然もあるんだね。素敵なが優斗の奥さんになってくれるなら、私は本当に嬉しいよ」
義父も穏やかに微笑み、義母もそのは表向き祝福してくれた。
私はこの族とうまくやっていけるとっていた。
だが、結婚活が始まると、その期待はしずつ崩れていった。
がまれてからも、私は仕事を続けたかった。
通勤は難しくなったため、宅ワークに切り替えた。にいるは増えたが、それは決して暇になったというではない。仕事のに洗濯をし、掃除をし、の世話をし、夕飯を作る。毎がとの戦いだった。
それなのに、優斗は私のやることに文句ばかり言うようになった。
あるの夕、私はと約束していたハンバーグを卓にした。
すると優斗は皿を見るなり、眉をひそめた。