"水亀の下に消えた嫁" 第4話
それだけなら昼でもできるはずだった。しかも、そのの夜は妊娠の嫁が姿を消した夜である。
伊藤刑事は茂雄さんのアリバイを確認した。
茂雄さんは夜11以、物のくにある居酒で常連客2と酒をんでいたという。確認を取ると、客たちの証言も致した。
「確かに来ていました。11過ぎにはにいました」
つまり、茂雄さんは10頃に斉藤を訪れ、亀をかし、その居酒へったことになる。
直接な犯となるかどうかは微妙だった。
警察は茂雄さんをく引き止められなかった。
捜査が踏みする、さゆりさんの母、鈴よしこさんが警察署へ駆け込んできた。
には通帳のコピーが握られていた。顔は青ざめ、息は荒かった。
「娘の座から、100万円が引きされています」
伊藤刑事はコピーを受け取り、付を確認した。
引きしは48午4。さゆりさんが姿を消す3だった。
当の100万円は、般な会社員の数か分の料に相当する額だった。妊娠の女性が突然それだけの現を引きし、その3に財布も持たず消える。
偶然とはえなかった。
よしこさんは震える声で言った。
「娘はATMにも慣れていませんでした。こんなをでろすなんて考えられません」
に確認すると、確かにATMで引きされていた。
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しかし1993当、ATMに防犯カメラはなく、誰が操作したかを確認することはできなかった。
そのの午、さゆりさんがしていたという証言はあった。
だが、ひとりではなかった。
の入で、女性と緒に歩く姿を見たという民がいた。ただしろ姿だけで、顔までは確認できなかった。
伊藤刑事の線は、再びふみさんへ向いた。
しかしふみさんは否定した。
「その、嫁となどしていません。私はにいました」
それを裏付けるはいなかった。
同に、否定する決定証拠もなかった。
さらに、さゆりさんが通っていた教会の神父が警察を訪れた。
神父は穏やかな声で、しかし刻な表をしていた。
「内容は話せません。ですが、さゆりさんは姿を消す10ほど、尋常ではない様子で教会へ来ました」
目は腫れ、は震えていたという。
教会をる、さゆりさんはこう言った。
「神父様、私、もうどうしたらいいか分かりません」
伊藤刑事は、事件が1点に収束していくのをじていた。
妊娠。
姑との対。
消えた100万円。
亀をかした夜。
庭から聞こえた音。
だが、捜査はそこできな壁にぶつかった。
匿名話があったのだ。
「斉藤ふみさんが、411の夜、シャベルを持って庭にるのを見ました」
声は加されていた。公衆話からの通報で、発信者は特定できなかった。
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伊藤刑事は令状を求めた。
田翔平さんの音の証言、田静さんのの匂いの証言、匿名話。材料はそろいつつあった。
しかし、匿名報だけではいと層部は判断した。
令状の申請が遅れる、ふみさんは突然、を売りにした。
そのきはあまりにもかった。
ようやく捜査員たちが庭に入った、亀周辺のはすでにえられていた。
掘っても、遺骨も証拠物もてこなかった。
ただ、自然にしいがかぶせられた痕跡だけが残っていた。
伊藤刑事はそのを見ろし、唇をく結んだ。
何かがあった。
確かにここで何かがあった。
だが1993の捜査は、そこで止まった。
斉藤の庭を掘り返した捜査は、何の成果も得られないまま終した。
亀の周辺からは、自然にしいが見つかった。誰かが度掘り返し、再び埋め戻したような痕跡も確認された。しかし、それだけだった。
遺骨も凶器も発見されなかった。
伊藤啓司刑事は掘削現の端にち、沈黙したまま庭を見つめていた。
のが吹き、柿のの葉が揺れている。
だが彼の胸にはい違だけが残っていた。
何かが隠されている。
しかし、それを証する段がない。
当の捜査環境では限界があった。
防犯カメラはなく、携帯話も普及していない。
匿名の証言だけでは件できない。
庭を掘っても何もない。
結果として事件は「の能性を完全には否定できない失踪事件」