"十年介護を捨てた日" 第4話
私は息を呑んだ。
「プロの介護士を雇ったら30万円はかかるところを、おはただでやってくれた。介護費用も活費もしてくれて、本当に助かったよ」
その言葉は、刃物より鋭かった。
勝はさらに続けた。
「由美子には言ってある。妻は介護員として雇っているようなもので、なんてとっくにないってな」
私は唇を噛んだ。
血のがした。
「最に言っておく」
勝は寝へ向かいながら、振り返った。
「おとの40、本当につまらなかった。特にこの10は獄だった。暗い顔して介護の愚痴ばかり。女としての魅力なんてゼロだ」
私は何も言えなかった。
「由美子と会えて本当に良かった。やっとが楽しくなったんだ」
そして、最に勝は言った。
「おなんて、最初からしてなかった」
その瞬、私ので何かが完全に壊れた。
だが同に、別の何かがまれた。
氷のようにたいりだった。
勝が寝へ消えたあと、私はリビングにひとり残された。
そして、誰もいない部で静かにつぶやいた。
「じゃあ、私も介護と嫁の役目を辞めさせてもらうわ」
勝が寝に消えたあと、私はしばらくリビングの子に座っていた。
りで震えていた。
けれど、のは議なほど静だった。
泣く気にはならなかった。
叫ぶ気にもならなかった。
ただ、これから何をすべきかを考えていた。
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私はスマートフォンを取りし、アプリをいた。
指紋認証を済ませ、残を確認する。
退職の残りは約800万円。
10の介護費用で、すでに2000万円くを使っていた。
それでも、まだ残っている。
助産師として37働いてきたからこその蓄えだった。
次に額を確認した。
私のは18万円。
勝には15万円だと言っていた。
本当の額をられたら、さらに搾取されるとっていたからだ。
介護費用がなくなれば、私は1でも分に暮らしていける。
その事実を確認した瞬、胸のにさなかりが灯った。
「らなかったでしょうね、勝さん」
私はさく笑った。
次に、古い帳を引きしから取りした。
表は擦り切れ、角は丸くなっている。
そこには10の介護記録がびっしりとかれていた。
何におむつ交換をしたか。
何をべさせたか。
体温、血圧、薬の。
かかった費用。
そして、勝に言われた言葉。
無料の介護士。
介護員。
役たず。
女としての価値はゼロ。
私はそれらを、付とともに記録していた。
かなければ、自分が壊れてしまいそうだったからだ。
記録は、私のを保つための唯の段だった。
さらに、スマートフォンの録音アプリも確認した。
半から、私は勝との会話を密かに録音していた。
いつか何かの証拠になるかもしれない。
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そうっていた。
そして今、その直は正しかった。
勝の暴言は、はっきりと残っていた。
私はく息を吐いた。
夜2。
迷った末に、親友の真理子へ話をかけた。
真理子は同じ助産師仲で、私よりしく婚を経験していた。
数回の呼びし音のあと、眠たそうな声が聞こえた。
「静? こんなにどうしたの?」
私はスマートフォンを握りしめた。
「実は、婚することになったの」
瞬、話の向こうが静かになった。
私はそこから、勝に言われたことを順番に話した。
倫。
妊娠。
介護員。
無料の介護士。
由美子との再婚。
義母の施設費用まで私に払わせようとしていること。
話し終える頃には、真理子の声はりで震えていた。
「何なの、その男。絶対に許せない」
「真理子……」
「静、すぐに弁護士を紹介するわ。私の婚のにお世話になった先よ」
「ありがとう。でも、そのにやることがあるの」
「やること?」
私は窓のを見た。
夜けの空はまだ暗かった。
「介護と嫁を、辞めるの」
話の向こうで、真理子が息を呑む気配がした。
そして、はっきりと言った。
「それでいい。今すぐ辞めなさい」
その言葉に、私は初めてしだけ泣きそうになった。
誰かに認めてもらいたかった。
私は辞めていい。
そう言ってほしかったのだ。
翌朝5。
いつものに目が覚めた。
けれど私は、義母の部へはかなかった。
代わりにクローゼットをけ、自分の荷物をまとめ始めた。
着替え、通帳、保険証、印鑑、帳、録音データを保したスマートフォン。