"海が隠した最後の写真" 第1話
19898、笠原諸島へ休みの旅にかけた若い恋たちが、の真んで忽然と姿を消した。
桜、歳。健太、歳。は都内の学に通う恋同士だった。携帯話もなく、防犯カメラも今ほどくなかった代である。警察は当、が観にを滑らせてへ転落した事故として処理し、事件はい捜査記録だけを残して終結した。
しかしの20047、父島からへキロほどれた無島で、すべてを覆す発見があった。
そのの夕方、態研究チームは、干潮にだけ姿を現す磯の調査のため、荒い波が岩に砕ける無島へ陸していた。チームの田博士は、濡れた岩にを取られないよう、ろの研究員たちに声を張りげた。
「みんな、元に気をつけろ。ここの岩は滑る。よそ見するな」
ヘッドライトを点けた田博士は、潮に削られた洞窟の入へをかがめ、暗いへ体を滑り込ませた。洞窟のは湿った空気に満ち、波の音だけがく反響している。数分、博士の声が急にくなった。
「こっちへ来てくれ。何かある」
に続いた研究員の伊藤が懐灯を向けると、洞窟の奥、岩の隙にいものが散らばっていた。伊藤は息を呑み、顔を青ざめさせた。
「チーム……あれ、の骨じゃありませんか」
田博士が恐る恐るづくと、それは違いなくの蓋骨だった。
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博士はずさりし、洞窟のへびすと、震える声で叫んだ。
「すぐ警察に通報しろ。く!」
、ヘリコプターの轟音とともに警察と科学警察研究所の職員が島に到着した。佐藤捜査官は狭い洞窟のをライトで照らしながら、慎に調べていった。つの遺骨は、まるで互いを見つめうようにくに横たわっていた。
その、佐藤の目が岩の隙に挟まった古い布の塊を捉えた。
「リュックサックがあります」
埃を払いながら取りすと、それはすり切れてあせた登用のリュックだった。からは、防パックに包まれた古いフィルムカメラがてきた。
週、京の科学警察研究所で鑑定結果がた。佐藤捜査官は報告を持って会議に入り、い声で告げた。
「DNA鑑定と歯科記録を照した結果、遺骨は19898に笠原で失踪した学カップル、桜さんと健太君で違いありません」
そのらせは、警庁未解決事件捜査班にも届いた。鈴警部は、埃をかぶった古い捜査ファイルを机に広げた。若い巡査だった頃、自分が初めて関わった事件だった。
「田、こっちへ来い」
輩の田刑事がづき、ファイルを覗き込む。
「1989、笠原の学カップル失踪事件……これですね」
捜査記録は驚くほど簡素だった。最の数には、こうかれていた。
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――岸でを滑らせた事故、または難事故と推定。事件性なし。
鈴警部は乾いた笑いを漏らした。
「これが捜査報告か。まるで説だな」
、事件をく片付けようとしていた司たちの顔が脳裏に浮かぶ。鈴は拳を握りしめた。
「今回はそうはいかない。まずはあのカメラだ。フィルムを復元する」
数、デジタルフォレンジックチームから連絡が入った。
「フィルムの復元に成功しました。全枚、枚を確認できます」
鈴警部と田刑事はすぐに研究所へ向かった。画面に枚ずつ写真が映しされる。最初の数枚には、青いを背景に笑う桜と健太が写っていた。の顔は若く、眩しいほど幸せそうだった。
田刑事が画面を見つめながら言った。
「写真の物は桜さんと健太さんで違いありません」
鈴警部は別の写真に目を止めた。背景に、るい民宿の板が写っている。
「かもめ荘……」
鈴の声がくなった。の記憶のに、確かにその名があった。
「田、荷物をまとめろ。笠原へくぞ。すべてはそこから始まっている」
そのに、鈴たちは健太の実を訪ねた。遺骨が見つかったという警察からの連絡に、健太の母、芳はそのに崩れ落ち、声をげて泣いた。
「ああ、健太……やっとお母さんのところに帰ってきたのね」
鈴警部と田刑事は、かける言葉も見つからず、ただ彼女の背をさすることしかできなかった。