"消された両親の席" 第9話
「私自も、悪気があったわけではありません」
私はそのを最まで読みましたが、返事はしませんでした。
悪気がなかった。
その言葉ほど、傷つけられた側にとって空しいものはありません。
悪気がなければ、を傷つけてもいいのでしょうか。
悪気がなければ、相を見しても許されるのでしょうか。
私はを静かに封筒へ戻し、机の引きしにしまいました。
数週が過ぎた頃、健太郎からまたいが届きました。
今度は、封筒の字が乱れていました。
私はの窓辺に座り、ゆっくりと封をけました。
そこには、こうかれていました。
「父さん、母さん。僕は、自分が何をしたのか、ようやくし分かってきました。僕はを恥ずかしいとったんじゃなく、自分が見栄を張るためにを利用し、都が悪くなると隠そうとしました。最でした」
私は読みめながら、指先がし震えるのをじました。
「学費も、居の援助も、結婚式の費用も、全部当たりだとっていました。謝しているつもりで、本当は何も分かっていませんでした」
そこまで読んだ、目の奥がくなりました。
初めて、健太郎の言葉がしだけに届いた気がしました。
けれど、まだすぐには返事をしませんでした。
私はを持ったまま庭へました。
貴は縁側で本を読んでいました。
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「健太郎からです」
私がを差しすと、夫は黙って受け取り、ゆっくり読みました。
読み終えたあと、夫はしばらく何も言いませんでした。
やがて、静かにをきました。
「しは、自分の言葉になってきたな」
「ええ」
私は頷きました。
「でも、まだ会うにはいですか」
夫は庭の々を見つめました。
「もうしだけ待とう。反省は言葉ではなく、そのの態度で分かる」
その言葉に、私はく頷きました。
親子の縁は、簡単には切れません。
けれど、だからこそ、簡単に元通りにしてはいけないもあるのです。
それからかほど経った頃、健太郎がでを訪ねてきました。
そのは朝からがっていました。庭のに粒が落ち、の根から静かに雫が垂れていました。
田さんから事に連絡がありました。
「健太郎様が、本おで伺いたいとのことです。麗華様もご両親も同されないそうです」
私は貴と顔を見わせました。
夫はしばらく考えたあと、静かに頷きました。
「会おう」
玄関のチャイムが鳴ったのは、午過ぎでした。
私が扉をけると、そこにっていた健太郎は、結婚式のとは別のようでした。
価なスーツではなく、なジャケットを着ていました。髪もし乱れていて、顔には疲れが滲んでいました。
健太郎は私を見るなり、くをげました。
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「母さん……本当に、ごめんなさい」
その声は震えていました。
私はすぐには答えませんでした。
ただ、玄関先につ息子の姿を見つめました。
かつてさなで私の袖を掴んでいた子。
をすと私のをさなかった子。
その子が今、になり、違い、傷つき、ようやく自分の愚かさをって、私のにっていました。
「がりなさい」
私がそう言うと、健太郎は目を見き、それからもう度をげました。
居では、貴が静かに待っていました。
健太郎は父のに座ると、畳に両をつきました。
「父さん、母さん。僕はを利用しました。育ててもらった恩も、支えてもらったも、何も見えていませんでした」
貴は黙って聞いていました。
健太郎は続けました。
「麗華のに認められたい、派に見られたい、そのことばかり考えていました。を隠せば、自分の価値ががるとっていました。でも、本当は逆でした。を恥だとった僕自が、番恥ずかしいでした」
私は湯呑みにお茶を注ぎ、健太郎のに置きました。
湯呑みは、私が昔作った茶碗でした。
健太郎がさい頃、「母さんの茶碗はにあたたかい」と言ってくれた形に、し似せて作ったものです。
健太郎はそれに気づいたのか、湯呑みを見つめたまま唇を震わせました。
「これ……」
「あなたが昔、好きだと言ってくれた形よ」
私が静かに言うと、健太郎の目から涙が落ちました。