"消された両親の席" 第6話
会が、再び静まり返りました。
その静寂は、先ほどよりもさらにいものでした。
「作品は点数百万円で取引され、国内の美術館に収蔵されております。特にでの評価がく、ヨーロッパの王にも作品を献されたことがあると伺っております」
麗華さんの顔が、真っ青になっていきました。
「……国宝……?」
「方で細々と、というのは、おそらくご本のご謙遜だったかと。実際には、本を代表する陶芸のおでございます」
会のゲストたちが、また斉に検索を始めました。
「本当だ。美智子先」「この、テレビで特集していた方じゃないか」「私、先の個展にったわ。作品、本当に素らしかった」
別のゲストも声をげました。
「うちの会社の応接にも、先の作品が飾ってあります」
健太郎はち尽くしていました。
をいていましたが、言葉がてきません。
そして、支配は決定な話を告げました。
「そして、本の結婚式の費用でございますが……」
麗華さんのお父様が、慌ててを挟みました。
「費用は私が全額負担したはずだ。領収もある」
その声には、必さが滲んでいました。
支配は静かに答えました。
「お客様の領収をご確認ください。お客様からのお支払いは、形式の内百万円のみでございます」
お父様のが震え始めました。
広告
ポケットから取りした領収を見つめます。
「実際の費用総額千百万円は、すべて会が匿名でご負担されておりました」
会が完全に凍りつきました。
「千百万円……」
麗華さんのお母様が、震える声でつぶやきました。
「会は、息子様の結婚式だからと、最のプランをご用されました。お料理も、おも、演も、すべて最級のものを。そして、息子様たちには言わないように、と」
健太郎の膝が、がくりと崩れそうになりました。
隣にいた友が、慌てて支えました。
「そんな……じゃあ、父さんたちは全部ってて……」
「はい」
支配は静かに頷きました。
「会は、すべてをごじので、今このにいらっしゃったのです」
麗華さんが、崩れるように子に座り込みました。
そして支配は、さらにい声で言いました。
「先ほど、会から直接お話がございました」
会の全員が息をみました。
「本の結婚式は止とする、と」
その言葉が会に響いた瞬、まるでが止まったようでした。
麗華さんが叫びました。
「止? そんな、どういうこと?」
「会のご向でございます。この式は会の所でございますので、従うほかございません」
ゲストたちがざわめき始めました。
「結婚式が止?」「そんなことって……」「でも、オーナーの向なら……」
麗華さんのお父様が、必の形相で言いました。
広告
「待ってくれ。何かの違いだ。会に直接話をさせてくれ。謝罪する」
その声には、らかな恐怖が混じっていました。
支配は、通の封筒を差ししました。
「会より、こちらをお預かりしております」
健太郎が震えるで封筒を受け取りました。
には、が入っていました。
夫の字でした。
几帳面で、丁寧な字。
健太郎は震える声で読み始めました。
「健太郎へ。おは今、切なことを忘れていた。を見た目や肩きで判断してはいけない。本当に切なものは、おや位ではない。それをおに教えたかった。父より」
読み終えた健太郎のから、便箋がはらりと落ちました。
華やかだった会は、静まり返っていました。
誰も座ることのない子。
運ばれることのない料理。
美しく飾られた。
すべてが、虚しくそこに残されていました。
式をにした私たちは、自宅へ向かうのにいました。
バッグので、私のスマートフォンが何度も震えていました。
画面を見ると、健太郎からの着信通が次々と表示されていました。
件、件、件。
数えるのをやめたくなるほど、着信は増え続けました。
夫のスマートフォンも、同じように鳴り続けているようでした。
けれど、私たちは話にませんでした。
ただ静かに、窓のを眺めていました。
夕焼けが美しく広がっていました。
茜のが、ゆっくりとを染めていました。
「あなた、これで本当によかったんでしょうか」