"実家ホテル終了の日" 第1話
「ホテル代が浮くからさ、実に泊まることにしたから」
話越しに息子の直からそう告げられた瞬、私はにしていた湯呑みを落としそうになりました。
私、子は67歳。夫の博と2で、のさな町にある軒で静かに暮らしています。博は70歳。元員で、いつも穏やかに物事を受け止めるです。
そのも、朝のダイニングには柔らかなが差し込んでいました。庭では、夫が切に育てているバラがに揺れていました。
「今のバラもきれいに咲いたな」
「あなたのおかげね」
そんな何気ない会話を交わしながら、私たちは朝を取っていました。をねてからの夫婦2の暮らしは、派ではありません。けれど、湯気のつ噌汁と焼き魚、庭のを眺めるが、私にとっては何より切でした。
そこへ突然、スマートフォンが鳴りました。
画面には、息子の直の名が表示されています。直は42歳。企業に勤め、妻の百さんと2の子どもに恵まれています。私はし嬉しくなって、すぐに話を取りました。
「もしもし、直?」
けれど、返ってきた声には挨拶も、こちらを気遣う言葉もありませんでした。
「母さん、来くから。6で泊まるから準備しといて」
私は箸を持つを止めました。
「6って……あなたたち族4じゃなくて?」
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「うん。百の親も緒。ホテル代が浮くし、実に泊まればいいだろ」
直の声は軽いものでした。まるで私たち夫婦の都など、考える必もないと言っているようでした。
私は言葉を探しましたが、すぐにはてきませんでした。
「あのね、直、急に言われても……」
「じゃあまた連絡する。細かいことは百からメールさせるから」
そう言うと、通話は方に切れました。
元からしたスマートフォンを見つめたまま、私はしばらくけませんでした。朝のるい部ので、さっきまでの穏やかな空気だけが、静かに壊れていくようでした。
「どうした?」
夫が聞をたたみ、配そうに私を見ました。
私は事を説しました。直が来、百さんの両親まで連れて6で泊まりに来ること。ホテル代が浮くから実に泊まると、当然のように言ったこと。
夫は黙って聞いていました。
「息子も変なんだろう」
最初に夫はそう言いました。けれど、その声にはいつもの柔らかさだけではなく、かすかな戸惑いが混じっていました。
「そうね。族だから」
私はそう答えました。
けれど胸の奥には、さな棘が刺さったような痛みが残りました。
息子のためなら、これまで何でもしてきた。教育費も、学までの費用も、できる限り負担しました。直がを買うには、として800万円を援助しました。
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孫がまれてからも、お祝い、育児用品、必な支援は惜しみませんでした。
息子の幸せが、私たちの幸せだとっていたからです。
けれど、そのの話には、謝も慮もありませんでした。
ただ、「泊まるから準備しておいて」という決定だけがありました。
私は湯呑みを両で包みながら、めていくお茶を見つめていました。
そのはまだ、自分が数週に玄関の鍵を替えることになるなど、像もしていませんでした。
直からの話の、数、私は落ち着かない気持ちで過ごしました。
朝起きて台所にっても、庭にをまいていても、ふとした瞬にあの言葉がの奥によみがえります。
「ホテル代が浮くから」
そのたびに、胸の奥がしえました。
そして予告通り、百さんからメールが届きました。件名は「旅について」。私はリビングのソファに座り、鏡をかけ直してから画面をきました。
そこには、細かい求がびっしりと並んでいました。
子どもたちの布団を用しておいてください。
4分と子ども2分なので、できれば広めに寝られるようにしてください。
子どもにアレルギーがあるので、事は対応をお願いします。
朝は7、夕は18厳守でお願いします。
駅まで迎えに来てもらえると助かります。
そして最に、こうかれていました。
「私の両親も緒ですが、気を使わないでください」
私はその文を何度も読み返しました。