"追い出された正月の一万円" 第2話
「そんな銭で、偉そうにしないでください。子供たちの教育に悪いわ」
瞬、自分が何を言われたのか全く理解できず、ただの奥がじーんとくなった。が完全に止まったかのように、周囲の空気が瞬にして凍りつき、孫たちがにした封筒を嬉しそうに振る無邪気な姿が、急にくの、自分とは全く関係のない世界の来事のように霞んで見えた。
私は呆然とち尽くしたまま、助けを求めるようにして、しれた所にっていた息子の孝之の方へ線を向けた。血を分けたが息子なら、この理尽な状況を止めてくれるはずだ、と。だが、息子は嫁の暴言を遮るどころか、むしろ彼女の隣へ歩み寄ると、酷な表でしっかりと腕を組んだ。そして、母親である私を蔑むようなたい目で見したまま、声で叫んだのだ。
「ババア、もう帰れよ。いつまでそこにいるんだ。正々、余計なことして雰囲気ぶち壊さないでくれ」
その瞬、のでガーンと激しい鐘が鳴り響いたように、周囲のすべての音が消えった。界が急激に狭くなり、目のが真っ暗になる。夫がくなってからのヶ、私がどんないできりの夜を過ごしてきたか、この子たちはしでも考えたことがあったのだろうか。族の温もりに触れたい、ただそれだけの願いのために、をげ、気を遣い、を尽くしてここまでやってきたのに、最に返ってきたのが、実の息子と嫁からのたった言の辛辣な暴言だった。
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積みげてきた親子の絆や、族としてのささやかな信頼が、音をててっ端微に崩れ落ちていく。
私のので、まだ孫たちに渡し切っていなかった予備のポチ袋が、抑えきれないりとしみによって刻みに震えていた。固く折られた封筒の角が、私の指先にじわりと痛く突き刺さった。胸の奥がずきずきと激しく、引き裂かれるように痛んだが、それでも私は絶対に彼らので涙を流さなかった。ここで泣き崩れて取り乱したら、あの酷な2に完全に負けてしまうとったからだ。
嫁の線はなおも容赦なく私を射抜き、まるで汚い害獣か、あるいはの調を乱す厄介な邪魔者であるかのように鋭く突き刺さってきた。私のそのものを否定するような、その絶対な悪。
そのだった。私のすぐ元で、何かがさくいた。お正のれ着を着た孫のが、怯えた表で私の様子を配そうに見つめ、の顔を窺いながら、恐る恐る私の着物の袖をさなでつかんだのだ。そして、私をそっと見げて、のたちに聞こえないほどのさな、しかし澄んだ声でささやいた。
「お婆ちゃん、お玉ありがとう……」
その健気で温かい幼い言だけが、私のちぎれそうなの最の糸を、必に、引き留めるように支えてくれた。
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この子の優しさだけは本物だ。そうった瞬、私の胸の奥に、ほんのしの救いが灯った。
けれど、息子の荒々しい音と鳴り声が、その唯の救いの瞬をも容赦なく打ち砕いた。息子は私と孫のに割って入ると、孫の細い腕を引につかんで私から引きした。
「おい、もういい! 子供に変なこと吹き込むな! さっさと荷物をまとめろ!」
居の空気は鉛のようにく、息をすることすら苦しいほどに濁っていた。私は、これ以ここに秒たりともいてはならないと、ゆっくりと、しかし確実に背筋を伸ばしてちがった。
震えるで壁を支えながら、玄関に置かれていた古びたコートを羽織った。靴を履くに、私は最に度だけ、の効いたかりの灯るのを静かに見渡した。きれいに飾られた鏡餅、楽しげなテレビの特番、私が用したお雑煮の匂い。しかし、その華やかな景のどこを探しても、私の居所はもうどこにも残されていなかった。私は息子のえ切った背をじっと見つめ、を完全に押し殺した静かな声で言いました。
「んで帰ります」
その言をはっきりと残して、私は振り返り、玄関のい戸を静かに閉めた。パタン、という乾いたラッチの音が、親子関係の終焉を告げるかのようにたく響いた。