"義母介護八年、離婚の夜に捨てられた私の逆転" 第5話
そして今、弁護士から突きつけられた現実が追い打ちをかけていた。
「様が残された介護記録ですが……」
田弁護士は分いファイルを机に置いた。
それは何冊にも分かれていた。
通院記録。
投薬管理表。
事記録。
排泄記録。
徘徊対応記録。
夜対応記録。
ケアマネとの連絡履歴。
。
も欠かさずき続けられた記録だった。
隆はページをめくった。
そこには自分がらない母親の姿があった。
夜分。
排泄介助。
午分。
徘徊対応。
午分。
転倒防止対応。
午分。
着替え介助。
自分が寝ている。
自分がみ会で遊んでいる。
自分が浮気相と会っている。
はで戦っていた。
ページをめくる指が震えた。
「こんなの……」
わず呟く。
「こんなの聞いてない……」
田弁護士は静かに言った。
「聞いていなかったのではありません」
そして拍置いた。
「聞こうとしなかっただけです」
その言葉は鋭かった。
隆は何も言い返せなかった。
そのの夜。
私は仕事を終え、自分で借りたさなマンションへ戻った。
広くはない。
豪華でもない。
だが静かだった。
誰にも鳴られない。
誰にも命令されない。
私はソファに腰掛け、久しぶりにコンビニで買ったプリンをべた。
そのだった。
スマートフォンが鳴った。
また隆だった。
着信はすでに件を超えている。
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私はし迷った、話にた。
「何?」
すると隆は番叫んだ。
「助けてくれ!」
昨までとは別だった。
命令でも鳴り声でもない。
本気で追い詰められたの声だった。
「母さんが何もべないんだ!」
「薬もまない!」
「俺のことまで棒だって言う!」
「どうしたらいいんだ!」
私はしばらく黙っていた。
。
私が何度同じことを言っただろう。
何度助けを求めただろう。
そのたびに隆は言った。
勝にやれ。
おの仕事だろ。
俺を巻き込むな。
私は静かに答えた。
「らないわ」
「なっ……」
「私はもう関係ないもの」
隆の呼吸が止まった。
「頼む……」
今度はさな声だった。
「頼むから帰ってきてくれ」
その言葉を聞いた瞬。
私ので何かが完全に終わった。
ああ、このは最まで分かっていない。
帰ってきてほしいのではない。
介護員がほしいだけなのだ。
私というが必なのではない。
便利な具が必なだけ。
私は話を切った。
もう分だった。
数。
私は再び田弁護士と会っていた。
そこで初めてらされた事実があった。
静子さんは認症がする、公正証を残していた。
そこにはこうかれていた。
「美紀に謝する」
「私の娘以に尽くしてくれた」
「私の介護を最まで支えてくれた」
そして。
の介護への謝礼として。
静子さん名義の預の部を私へ遺贈するが記されていた。
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私は言葉を失った。
涙がそうになった。
静子さんは認症になってから、私を棒呼ばわりした。
罵倒もした。
物も投げられた。
それでも。
本当は分かっていてくれたのだ。
全部ではなくても。
どこかで覚えていてくれたのだ。
私は静かにをげた。
「ありがとうございます……」
誰に向けた言葉なのか。
自分でも分からなかった。
ただ。
が無駄ではなかったと初めてえた。
方の隆は急速に追い詰められていた。
会社では遅刻が増えた。
母親の介護。
事。
洗濯。
事。
これまで全部がやっていた。
それをで抱えた途端、活が回らなくなった。
は荒れた。
ゴミは積みがった。
洗濯物は腐った臭いを放つ。
蔵庫のでは品が腐敗していた。
真美は完全に連絡を絶った。
さらに追い打ちが来た。
会社にも浮気がられたのだ。
介護の母親を妻に押し付け、自分は若い女にを貢いでいた。
その事実は社内で瞬くに広がった。
隆は居所を失った。
でも会社でも。
誰からも相にされなくなった。
そして何より。
母親が毎聞いた。
「さんは?」
「さん、どこ?」
その言葉が隆を苦しめた。
静子さんは認症だった。
だが。
本当に必なが誰だったかだけは忘れていなかった。
半。
私はアトリエ佐々の主任デザイナーとして働いていた。
介護経験を活かしたユニバーサルデザインはく評価された。
講演依頼も来るようになった。