"天井裏の黒いバッグ" 第1話
2004101、曜の午。
京都区の古団で、田健はいつもと変わらない朝を迎えていた。49歳の健は、同じ所で15、古業を営んできた。常連客のでは、正直で面倒見のいい業者としてられていた。
しかし、そのの健の表は以よりかった。
2004に入ってから古は迷し、の売は急激に落ちていた。庫のは売れ残り、取引先への未払いも増えていた。からの借の利息も、毎のしかかっていた。
それでも健は族に詳しい事を話さなかった。妻の吉は46歳で、所のスーパーでパートとして働きながら計を支えていた。夫の事業が苦しいことは々じていたが、健がを閉ざす以、く問い詰めることはできなかった。
そのの午、健は突然、吉に話をかけた。
「今度の連休、京都へかないか」
受話器の向こうで、吉は瞬黙った。普段、旅を自分から提案する夫ではなかったからだ。
「急ね。どうしたの」
吉がそう尋ねると、健はしを置いて答えた。
「美希も就職活で疲れているだろう。気分転換に、族でかけるのも悪くないとってな」
23歳の娘、美希はそののに学を卒業し、就職活を続けていた。経営学を専攻し、真面目で責任のい性格だった。来週には面接も控えていたが、父から京都へこうと言われると、し迷ったあとで頷いた。
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「久しぶりだし、こうかな」
その言葉を聞いた健は、ほっとしたようにさく息を吐いた。
だが、彼が族旅を提案した本当の理由は別にあった。
健は2、京都で観ホテルを経営する鈴太郎から300万円を借りていた。最初は1、2かで返済できるとっていた。しかし事業の振は引き、元どころか利息さえ満に払えなくなっていた。
鈴は数から、ホテル経営の裏で融まがいの貸し付けをしていた。急にが必になったへ利でを貸し、返済が滞れば引に催促する。法と非法の境界線を歩くような危うい商売だった。
101の夜、鈴から健へ話があった。
「、族と緒に京都へ来い。そうすれば返済条件を考え直してやる」
健はしばらく受話器を握ったまま黙っていた。
族を連れていくことにはあった。だが、今週末までに最100万円を返せと言われても、もうどこからもは借りられなかった。もも、すでに首を横に振っていた。
もしかしたら、本当に返済期を延ばしてくれるかもしれない。
そのわずかな希望にすがり、健は鈴の提案を受け入れた。
翌102、曜の朝。
田はくに自宅をた。健が運転するいセダンには、1泊2分の簡単な荷物だけが積まれていた。
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吉はみ物と果物を用し、美希はさなカメラを持って助席のろに座った。
午9頃、は京を発し、名神速を通って京都へ向かった。
内では、久しぶりの族旅に吉と美希の声が弾んでいた。美希は窓のを眺めながら、の予定を楽しそうに話した。
けれど、ハンドルを握る健の横顔だけはかった。
妻と娘に気づかれないように笑っていたが、そのはずっと緊張していた。
同じ頃、京都内のしれにある観ホテルでは、52歳の鈴太郎がロビーで従業員に連休の準備を指示していた。
そのホテルは50ほどの規模ホテルで、方からの観客を主な客としていた。鈴は10からこのホテルを経営していたが、ここ数は京都の観産業も苦しく、ホテルの経営は順調ではなかった。
ほかに投資していた事業も失敗し、鈴の財政状況は悪化していた。
表向きはホテル経営者。
裏では利貸し。
その2つの顔を使い分けながら、鈴はを回していた。
午1頃、田は京都インターチェンジをりた。健はまず閣寺へ向かい、その、清寺にもを運んだ。吉と美希は観を楽しみ、美希のカメラには笑顔の写真が何枚も残された。
閣寺ので並んでつ3。
清寺の段でポーズを取る吉と美希。
その1枚1枚に、まだ何もらない族のが写っていた。