"壁の奥にいた妻" 第5話
「庭で子どもたちの声が聞こえる。所の子かもしれない。見てみたい」
「もしここからられたら、本をく。ここで何があったか、みんなに話す」
最の記録は199812の付だった。
「寒い。が壊れている。桂太郎は直すと言ったが、もう1週経った」
「もしんだら、誰かに真実をってほしい」
「壁にく。いつか誰かが読んでくれるかもしれない」
に鑑識がの壁を調べた、いもので刻まれた文字が見つかった。
「私の名は美紀です。夫が199011からここに私を監禁しています。これを見つけたら、私が自分のでったのではないことをってください」
1998から1999にかけての、の設備は故障した。
桂太郎は自分が使う居部分には気ヒーターを置いた。だがはえ切ったままだった。美紀は古い毛布にくるまり、寒さに耐えた。
1999、美紀はい肺炎を患った。
桂太郎は妻がっていくのを見ていた。だが医師を呼ぶことはなかった。医療関に連れてけば、監禁と虐待の痕跡がすべてらかになるからだった。
やがて彼は、へりる回数を減らした。
べ物を忘れるが増えた。
だけが置かれるもあった。
199911から12頃、美紀はしたと推定された。
因は期の衰と栄養失調、医療を受けられなかったことによる臓器全だった。
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桂太郎が彼女の遺体を見つけた、鎖はまだ腰につながれていた。
もなお、美紀は壁から解放されていなかった。
桂太郎は遺体を処理しようと考えた。だが、今さら美紀の遺体が見つかればくの疑問を呼ぶ。なぜ元妻がにいたのか。なぜを届けなかったのか。そもそも、10どこにいたのか。
彼はへの入りを塞ぐことにした。
壁に板を打ち、から塗り固め、そこに部などなかったように隠した。匂いをごまかすために換気を細し、ので平然と暮らし続けた。
だが、に眠る真実は消えなかった。
美紀の、桂太郎はさらに6かほどそのにみ続けた。
しかし、次第に耐えられなくなっていった。夜になると、から美紀の声が聞こえる気がした。階段のから、鎖の音が聞こえるようにえた。
2000初、桂太郎はを売ることを決めた。
買いは、京から来た若い夫婦、斎藤武と恵美子だった。2にはさな子どもがいて、田舎でく買える古いを探していた。価格は相よりく、取引はくまとまった。
桂太郎はの本当の構造を説しなかった。
具置きとして使っていたメインのだけを見せ、塞いだ壁の向こうに部があることは黙っていた。
20003、桂太郎はへ引っ越した。札幌の産加で警備員の仕事に就いた。
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かつて警察官だったことはあまり話さず、過を聞かれると曖昧に笑った。
方、斎藤夫妻は居の改装を始めた。
最初はの階からだった。配線を直し、壁を塗り、を張り替えた。作業はしずつみ、4になってようやくにをつけた。
武はを作業にするつもりだった。換気をえ、具を置き、子どもたちが入らないように扉も補する予定だった。
しかし換気を調べている、あの匂いに気づいた。
塞がれた壁。
空洞の音。
そして、破られた壁の奥にあった骨。
警察は現を封鎖した。
さなは夜にして犯罪現となった。鑑識が入り、写真が撮られ、の片が1枚ずつ袋に入れられた。
刑事は、美紀の記録を読みめるうちに、顔を失っていった。
そこには10いがあった。
付。
痛み。
空腹。
寒さ。
声を失っていく恐怖。
そして、「自分は逃げたのではない」と訴える最の言葉。
DNA検査により、遺体は美紀のものと確認された。
期は1999末頃。骨には過の骨折や性な栄養失調の痕跡が残っていた。歯の状態、骨密度、関節の変形から、期にわたる極端な環境が推定された。
警察の記録を調べると、美紀の失踪届は1991に事実処理済みとなっていた。
「本のによる失踪」
そう記録されていた。
刑事は類を閉じ、しばらく机のを見つめた。
同じ警察組織のにいた男が、妻を10くに隠していた。