"壁の奥にいた妻" 第3話
庭内の争いがあったなら、しばらく距を置いているだけかもしれない。
そう説された。
しかも桂太郎は警察官だった。
同僚たちは、彼が犯罪を犯すなど考えもしなかった。
その、美紀はすでに、同じ町のにいた。
誰にも見つけてもらえない暗ので。
幸子は諦めなかった。
何度も警察署へを運び、美紀が危険な状況にいたことを訴えた。婚したいと相談していたこと。暴力を受けていた能性があること。突然連絡が途絶えたこと。
しかし、警察の反応は鈍かった。
署は幸子を応接に通し、落ち着いた声で言った。
「巡査は良な職員です。確かに庭に問題はあったようですが、奥さんはしいを始めることにしただけかもしれません」
幸子は膝ので拳を握った。
「妹はそんなではありません。必ず私に連絡します」
「お気持ちは分かります。しかし、事件性が確認できません」
1990代の本では、庭内暴力に対する社会の目は今よりもはるかに鈍かった。夫婦の問題は庭内で解決するべきだと考えられ、妻が耐えることを当然とする空気が残っていた。
さらに、桂太郎は警察官だった。
さな町では、肩きと評判が事実よりもく扱われることがあった。
桂太郎自も、周囲に話を広めていた。
「妻は緒定だった」
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「婚をちらつかせて、こちらを困らせていた」
「もしかすると、の男と会っていたのかもしれない」
そう聞かされた同僚たちは、むしろ桂太郎に同した。
美紀の声はどこにも届かなかった。
失踪から6か、桂太郎は婚を申してた。
類には、美紀が自分のでをて方であることが記されていた。さらに、美紀がいたとされるまで添えられていた。
「捜さないでください」
「婚に同します」
跡鑑定では、署名は本のものにいとされた。
しかしに分かったことだが、桂太郎は美紀の署名が入った類に数アクセスできるにあった。の細、医療記録、各種申請。署名を真似ることは難しくなかった。
19916、婚は成した。
類ので、美紀は桂太郎の妻ではなくなった。
「自分のでをた女性」として処理された。
幸子はそれでも捜索を続けた。
私探偵を雇い、隣の町に広告をし、京までを運んだ。駅、役所、病院、女性相談施設。美紀が現れていないか、どこかで暮らしていないか、能性のある所を1つずつ調べた。
しかし、何も見つからなかった。
美紀は煙のように消えてしまった。
方で桂太郎は、警察官として勤務を続けていた。
同僚たちは彼に同した。
「奥さんに捨てられて変だったな」
「く再婚して、をやり直せ」
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そう声をかける者もいた。
だが桂太郎は再婚しなかった。
次第に付きいを避け、職の事にも参加しなくなった。休はにこもり、所のには「修理や片付けをしている」と説した。
実際、彼は毎へりていた。
そこには、類では消されたはずの妻がいた。
窓のないさな部で、腰を鎖につながれたまま。
桂太郎にとって、美紀はもう妻ではなかった。
逃げることも、訴えることも、誰かに助けを求めることもできないだった。
彼は法律をっていた。
そして、その識を美紀を守るためではなく、美紀を消すために使った。
にから見つかった片により、美紀がそこでどのように過ごしていたのかがしずつ分かった。
美紀は、桂太郎がべ物と緒に持ってきた聞の切れ端や包装の裏に、付や来事をき残していた。
最初の記録はかった。
「199011。ここにいる。夫が私をつないだ」
その文字は比較しっかりしていた。恐怖のにも、まだ自分を保とうとする力があった。
19901115の夕方、美紀が料品から帰ると、桂太郎はで待っていた。酒の匂いがし、目は赤く、りを隠そうともしていなかった。
「本当にていくつもりか」
美紀は震えながらも答えた。
「もう決めました。、姉のところにきます」
その言葉で桂太郎は激した。
婚されれば、町で噂になる。警察官としての面子が潰れる。美紀が暴力について誰かに話せば、仕事も位も失う。