"レモングラスの下の悪臭" 第6話
「もし私の誤解だったら?」
「誤解なら健康診断をしただけで済む。でも誤解じゃなかったら、数遅れるだけで取り返しがつかなくなる」
その言葉で、迷いは消えた。
私は佳さんに着を着せ、裏から支えてへ向かった。体は驚くほど軽いのに、鉛のようにくじた。彼女の体から漂う酸っぱく臭い匂いに、喉が詰まった。
玄関くで、お伝いさんが買い物から戻ってきた。
「奥様、こんなにおばあ様を連れてどちらへ?」
臓が喉元までせりがったが、私は笑顔を作った。
「にばかりいると退屈されるようなので、しの空気を吸いにこうとって」
お伝いさんがさらに尋ねるに、私はに乗り込んだ。
病院までのは、異様にかった。部座席に横たわる佳さんの顔はに見えた。信号で止まるたびに焦りで息が詰まった。
病院の裏には、青い術着を着た護師2と、移式ベッドを押す健太先輩が待っていた。
のドアがくと、先輩は佳さんを目見て顔を変えた。
「く」
護師たちは迅速に彼女をベッドへ移し、いガラス扉の向こうへ運んでいった。私は追いかけようとしたが、先輩に止められた。
「君はここにいろ」
「私も入らせてください」
「だめだ。今は君がしっかりしないと」
扉が閉まった。
私は廊にち尽くした。
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消毒液の匂いがたく、病院の清潔さが、義母の部に漂っていた悪臭をいさせた。
どれくらい経っただろう。扉が勢いよくき、護師が青ざめた顔でてきた。その反応だけで、元から力が抜けた。
数分、健太先輩が戻ってきた。私はあんな刻な表の彼を見たことがなかった。
「さやか、座れ」
「話してください。義母はどうなったんですか」
先輩は廊の隅へ私を導いた。
「義母さんの状態はかなり悪い。脱、刻な衰、神経反応の鈍さ。だが最も刻なのはそれじゃない」
私は息を止めた。
「処置のためにを脱がせた、腰のとお尻にいずれがあった。ただのずれじゃない。壊がみ、膿がている箇所もある」
「ずれ……」
っている言葉なのに、がに入ってこなかった。
先輩はゆっくり言った。
「君が嗅いでいた匂いは、薬の匂いじゃない」
その瞬、胃がねじれた。私は廊の医療廃棄物入れに駆け寄り、涙がるほどえずいた。
あのレモングラス。異常なほど清潔な部。苦しそうな息遣い。マットレスの染み。あの匂いは漢方薬などではなかった。
の体が腐っていく匂いだった。
私は廃棄物入れの縁を掴み、震えた。
「私、同じにんでいたのに、何もらなかった……」
先輩は慰めなかった。ただ言った。
「今、自分を責めても誰も救えない」
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その、血液検査の初期結果がた。
「血液からベンゾジアゼピン系の成分が濃度で検された。齢者に通常処方される量をはるかに超えている。期の薬物毒の兆候もある。さらに、属による毒の疑いもある」
私は声を失った。
先輩は言言をはっきり告げた。
「もしこれが事実なら、単なる介護ミスではない。用量の精神定剤でけなくし、ずれを悪化させ、同に毒物でらせ、老衰に見えるように偽装している能性がある」
私は震えながら言った。
「もしかしたら、夫が薬を違えたとか……」
「さやか、しっかりしろ」
初めて先輩が声を荒げた。
「1度の失敗なら事故と言える。だが、これほど期にわたる状態は失敗じゃない」
その、私の携帯話が鳴った。
画面には、「する裕」と表示されていた。
ビデオ通話だった。
先輩がく言った。
「落ち着け。絶対に怪しまれるな」
私は涙を拭い、通話ボタンを押した。
画面に映った裕さんは、州のるい差しのにいた。青々とした芝が背に見える。彼は相変わらずった髪と穏やかな表をしていた。
「何をしていたんだ?」
「掃除して、佳さんのお粥を作っていたの」
「母さんはしくしているかい?」
しく。
その言葉で腕に鳥肌がった。
「ええ。いつもと同じよ」
「薬はきちんとませてあげたんだろうな」
私は喉を鳴らした。
「ええ、もちろん」
通話が切れた、背は汗で濡れていた。
健太先輩はたい目で言った。
「あいつはただの確認をしたんじゃない。