"東京駅に消えた母" 第2話
そんな姿を何度も見ていたからです。
朝の途、ミサはふと顔をげました。
「し、へてみたいねえ」
は箸を止め、しばらく黙って母を見ました。
それから、穏やかな声で言いました。
「では、京駅にでもきましょうか。の流れを眺めるだけでも気分転換になりますよ」
ミサはさく頷きました。
午10頃、2はをました。
所の主婦、清信子は、そののことをにいしています。信子は玄関先で掃除をしており、が普段とは違うきな鞄をげているのを見ました。
「さん、おかけですか」
そう声をかけると、はしだけ笑って答えました。
「母が荷物の片付けをしたいと言うので、しかけてきます」
その、信子はく考えませんでした。
しかし、にミサの方をった、あのきな鞄のことが胸に引っかかりました。
ただ混みを見にくだけなのに、なぜあんな鞄を持っていたのか。
あのには、いったい何が入っていたのか。
それでも信子は警察に届けることをしませんでした。
は町内でもられた親孝な男でした。疑う理由などないとっていたのです。
午11半頃、2は京駅に着きました。
駅構内はの波で埋め尽くされていました。改札付には旅鞄を持った々が集まり、待のベンチもほとんど空いていませんでした。
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は母のを引き、待の隅にあるベンチへ腰をろしました。
ミサはの流れをぼんやりと眺めていました。折、誰かの笑い声に顔を向け、またすぐに線を落とします。
正午がづいた頃、がちがりました。
「ちょっと洗いにってきます。ここで待っていてください」
ミサはさく頷きました。
「ここで待っていればいいんだね」
「はい。すぐ戻ります」
はそう言って、波のへ消えていきました。
けれど、10分が過ぎても、15分が過ぎても、は戻ってきませんでした。
ミサはそうに周囲を見回しました。
らない顔ばかりでした。き交うの音、発案内、子どもの泣き声、駅員の声。それらがなりい、ミサののできな渦になりました。
「……はどこへったの」
ミサはちがりました。
洗いを探そうと歩きしましたが、すぐに自分がどこから来たのか分からなくなりました。の流れに押され、待かられ、改札のくへてしまいました。
その、ぼんやりとち尽くす老女に気づいた駅員がいたという曖昧な証言もありました。駅務へ案内したような気がする、という話も残されました。
けれど、記録はありませんでした。
そのの午2、は交番の扉をけて駆け込みました。
息を切らせ、額には汗を浮かべていました。
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「母を探してください。京駅の待ではぐれてしまったんです。認症があるので、1にしておくと危ないんです」
は警察官のでをげました。
「私が、私がをしてしまったんです。私の落ち度です」
警察は無線で隣の交番に連絡を回しました。
72歳の女性。
着物姿。
認症あり。
京駅周辺で方。
その報はすぐに共されましたが、そのの夕方になってもミサは見つかりませんでした。
捜索は2にわたって続けられました。京駅周辺の商、公園、、くの病院、交番。いつく所はすべて調べられました。
けれど、ミサの姿はどこにもありませんでした。
川警部補は、を交番へ呼び、もう度あのの経緯を確認しました。
の話は変わりません。
「洗いにって戻ったら、母がいませんでした」
その説だけでした。
川警部補は、どこかしっくりこないものをじました。
しかし、確かな疑いを裏づける証拠はありません。
認症の齢者が、混雑した駅でを見失う。
それは分にあり得ることでした。
捜査が続くで、川警部補は1つ妙な点に気づきました。
は母の方という事にもかかわらず、弟や妹にすぐらせていなかったのです。
川がそのことを尋ねると、は目を伏せました。
「母の世話のことで仲がこじれまして、10以からほとんどき来がありません」
数、その弟と妹が交番を訪ねてきました。