"年金六万円の母" 第5話
企業経営の基本は、を切にすることです。その基本ができていない企業との取引は、弊社の理に反します。
翔平の顔が私に向きました。
「母さん、まさか……」
私は静かに答えました。
「何もらないわ」
嘘ではありませんでした。
えり子がここまでしてくれるとは、私もっていなかったのです。
その、話が鳴りました。
翔平は慌てて受話器を取りました。
「はい、川です」
彼の顔がさらに青ざめていきました。
「え……財会……」
翔平は震えるでスピーカーに切り替えました。
話の向こうから、凛としたえり子の声が響きました。
「川社ですね。財です」
翔平は声を震わせました。
「財会、これは体どういうことですか? うちは業績も順調で……」
「業績の問題ではありません」
えり子の声は静でした。
「あなたのお母様、川若子さんとおっしゃいましたね」
翔平は戸惑いながら答えました。
「母が何か?」
「若子さんは、私の切な親友です。代からの」
翔平と美咲は驚愕の表で私を見ました。
えり子は続けました。
「先、40ぶりに若子から連絡をもらいました。あなたがしてきたことを、すべて聞きました」
翔平は何も言えませんでした。
「1500万円ものを会社に提供してくれた母親から、6万円のを取り、事も満に与えず、施設送りにしようとしている。
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これは事実ですか?」
沈黙が落ちました。
えり子の声が段たくなりました。
「黙っているということは、事実なのですね」
翔平はようやく声をしました。
「会、それは族の問題で……」
「族の問題?」
えり子はく言いました。
「親を切にできないが、社員を切にできますか。顧客を切にできますか。そんな経営者に、私たちの切な資は預けられません」
「お願いします。会社が潰れてしまいます」
「それはあなたの責任です。親を捨てようとした報いです」
話の向こうで、えり子がく息をつく音が聞こえました。
「川社、最に1つ。若子は素らしい女性です。あなたを育て、夫の遺産すべてを惜しみなく与えた。そんな母親を粗末に扱うあなたに、経営者の資格はありません」
「会……」
「これで終わりです。契約に従い、1週以内に8000万円を返還してください」
話は切れました。
翔平は崩れるようにに座り込みました。
美咲も真っ青な顔でち尽くしています。
「8000万円……1週で8000万円なんて無理よ。絶対無理……」
2はパニック状態でした。
その、翔平が急にちがり、私に詰め寄りました。
「母さん、財会に頼んでくれ。取り消してもらってくれ。母さんの親友なんだろう?」
美咲も必に言いました。
「お願いします、お母さん」
私は静かにちがりました。
そして2のを通り過ぎながら、言だけ言いました。
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「暮らしの私に、何ができるの?」
それは、彼らが私に言った言葉でした。
そのから、のは獄のようになりました。
翔平は会社と自宅を何度も往復し、資調達に奔していました。けれど、財グループがを引いたという噂はすぐに広まりました。
の取引先も、次々とれていきました。
夜になると、翔平はリビングでを抱えました。
「どこも貸してくれない……」
美咲も、級ブランドのバッグや宝を売りにしました。けれど、8000万円には到底届きませんでした。
数の夜、ついに2は私の部に来ました。
翔平は畳のに膝をつき、そのままをげました。
「母さん、お願いします。財会に連絡を取ってください」
美咲も隣でをげました。
「お母さん、私たちが悪かったです。お願いします」
私は布団に座ったまま、2を見ろしていました。
つい先まで私を邪魔者扱いしていた2が、今は必にをげています。
翔平は涙声で言いました。
「会社が潰れたら、従業員50がに迷うんです。子どもの学費も払えなくなります」
私は静かに言いました。
「暮らしの私に、何ができるの?」
翔平は顔をげられませんでした。
美咲がはっとした表を見せました。自分たちが言った言葉をいしたのでしょう。
私は続けました。
「私はもう族じゃないって言いましたよね」
2は黙りました。
「まとい。邪魔者。居候。そう言われた私に、なぜ頼むんですか?」