"柿の木の下の息子" 第3話
松子はさくうなずいた。
「ええ……は言わなかったんですがね」
そう言うと、彼女はゆっくりと顔をげた。
「太君のことなんです」
川のペン先が止まる。
「佐藤太さんですか」
「はい」
松子はく息を吸った。
そして祝賀会の夜の景を語り始めた。
「あの子ね……ずっと笑ってなかったんですよ」
「みんなが純也君を囲んで騒いでるのに、だけ隅っこで座ってて」
「酒のグラスを握るが真っになるくらい力を入れてたんです」
川は黙ってを傾けた。
松子はさらに続ける。
「あれはね……友達を見る目じゃなかった」
「私が厨からただったんです」
「太君が純也君のろ姿をじーっと見てた」
松子の肩が震えた。
「怖かったんですよ」
「本当に怖かった」
「目がね……」
彼女は言葉を探すように線を落とした。
「憎んでるを見る目でした」
取り調べに沈黙が落ちる。
川はゆっくりと帳を閉じた。
。
誰も気付かなかった。
だが今になってみれば、その夜はすでに始まっていたのかもしれない。
友が壊れる瞬が。
松子が帰った、川はしばらく窓のを見つめていた。
すると突然、ドアが勢いよくいた。
「警部補!」
伊藤刑事だった。
息を切らしながら量の類を抱えている。
「の捜査資料を全部洗い直しました!」
「何かたか?」
伊藤はうなずいた。
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「失踪当の夜です」
「廃採の方向から男の鳴り声と鳴を聞いたという通報記録がありました」
川の目が鋭くなる。
「なぜ今まで埋もれていた」
「当の担当が事件として処理したからです」
伊藤はさらに枚の類を差しした。
「それだけじゃありません」
「その採なんですが……」
川は類を見る。
そして次の瞬、顔が変わった。
「所者は……」
「佐藤です」
伊藤がい声で答えた。
「当、佐藤太の実のでした」
部の空気が変した。
川はゆっくりちがる。
そしてく言った。
「佐藤太を呼べ」
「今すぐだ」
翌。
佐藤太が警察署に現れた。
歳になった彼は、研修医として京の学病院に勤務していた。
ったスーツ。
な顔ち。
誰が見ても将来望な医師だった。
しかし川はその表の奥にある何かを見逃さなかった。
「の夜を覚えていますか」
川が尋ねる。
太は落ち着いた表で答えた。
「もちろんです」
「純也の格祝いのでしたから」
「彼とはでみにきました」
「そのは別れました」
よどみのない返答だった。
まるで用していた台本を読むように。
だが川は枚の資料を机に置いた。
「そのの名は?」
「神台です」
太は即答した。
川は静かに笑った。
「おかしいですね」
太の表が止まる。
「そのは祝賀会の週に閉しています」
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沈黙。
太の顔から血の気が引いた。
川は何も言わない。
ただ見つめる。
太は初めて線を逸らした。
その瞬だった。
川は次の物の調査にく。
井鈴。
、純也と交際していた女性だった。
京・田馬。
さな自習を営む鈴は、純也の名を聞いた瞬に顔を失った。
「純也さん……」
涙があふれる。
「付きっていました」
川は静かに尋ねる。
「佐藤太さんとの関係は?」
鈴の表が張った。
「太さんは……先に私に告したんです」
「でも断りました」
「怖かったんです」
「何が?」
「執着です」
鈴は震える声で続けた。
「私を見る目が普通じゃなかった」
「だから断ったんです」
そして。
彼女は奥の棚から古い封筒を持ってきた。
保管していたものだった。
には通の。
川は袋をして封する。
そこには赤いペンで乱暴にかれた文字。
――おたちを幸にしてやる。
――俺のものを奪った代償を払え。
――幸せにはさせない。
川は無言で封筒を閉じた。
事件がきくき始めていた。
警察署へ戻った川は、すぐに跡鑑定を依頼した。
結果はに届いた。
脅迫状の文字。
そして佐藤太の跡。
致率は極めてかった。
伊藤刑事が興奮気に部へび込む。
「警部補!」
「今度は何だ」
「佐藤太の医学部入学です」
川が顔をげる。
「何か問題があるのか」
伊藤は資料を広げた。
「太はの受験に失敗しています」
「ところが翌、突然医学部に入学しているんです」