"録音機が暴いた息子の本音" 第5話
「俺が悪かった。俺が駄目な親父だった。全部、ごめん」
夫は謝った。
反論しなかった。
自分たちが何を犠牲にしたのかも語らなかった。ただ息子の残酷なみ言を受け入れ、「俺が悪い」と言った。
子はイヤホンをし、録音を止めた。
夫はキッチンのに座り込んだままだった。濡れた髪から落ちる滴と涙が、に混じっていた。
子は静かに言った。
「全部聞いたわ」
その瞬、彼女ので何かが凍った。
夫は息子ので、子の結婚指輪も、麦飯も、数えきれないセメント袋のみも、たったひとつの「ごめん」で否定したのだ。
々の犠牲は、おの留学費用より価値がなかった。
そう認めてしまったのだ。
子は、キッチンのに崩れた夫を見ろした。
りが込みげるとっていた。なぜあんな子に育てたのかと責めるのだとっていた。
だがは奇妙なほどたかった。
「茂さん」
夫がびくりと肩を震わせた。
「部に入りなさい。その匂いのついたを着替えなさい」
茂は最の誇りのかけらまで砕かれたように、よろめきながら寝へ向かった。
夜4。窓のはまだ暗かった。
子は寝の扉をけた。茂はガウンのまま、ベッドの脇にうずくまっていた。怯えた子どものような目で子を見げる。
子は静かに言った。
「茂さん。あなたは録音ので、ごめんと言ったわね」
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夫の顔がになった。
「それは、たちの言う通り、私たちには負債があると認めたということね」
「子……」
「いいの。私たちはあの子に涯を捧げてきた。私は結婚指輪を、あなたは若さと誇りを。それでもりない。返せと言うのなら、どうすればいいとう?」
夫は答えられなかった。
子は彼のたいを握った。
「昨夜、あなたがごめんと言った瞬、私たちは最のプライドまで差しして、きれいに精算したの。40分の負債を、あの言で全部支払った。だから、もう私たちは債務者じゃない」
夫の目がわずかに揺れた。
「これからは、私たちのをきましょう」
夜がけると、子は話を取った。
付きいのある産に連絡した。
「団の301号の件ですが、即で売却をお願いします。相より1000万円、いえ、2000万円げても構いません。3で処理できる買いを探してください」
次にへった。
定期預、普通預、解約できる保険。すべてを続きし、息子がらないしいへ移した。夫の実印と印鑑証が必な類もあった。子が求めると、茂は何も聞かず、引きしから実印をした。
マンションは2で買いがついた。相より3000万円もい破格の値段だった。
次は荷物だった。
子は黒いゴミ袋を何枚も買い、の部をけた。
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学代の本、卒業アルバム、の写真、幼い頃の。結婚してをてからも捨てられずにいたものを、彼女はためらわず袋へ詰めた。
それらはもういではなかった。
古い布とだった。
3目の午、空っぽになった部に話が鳴り響いた。表示には「田」とていた。
夫が反射に受話器を取ろうとした。子はそのにった。
話は鳴り続け、やがて止まった。
子は壁の話線を引き抜いた。
完璧な静寂が訪れた。
「茂さん、きましょう」
持っていく荷物は、さな旅鞄2つだけだった。夫の着替え、子の、数分の着、歯ブラシ、そしてしいの通帳。
子は1度も振り返らず、団をた。
速バスターミナルで、子はき先表示を見げた。
京、名古、阪、福岡、青森、札幌、鹿児島。
彼女は番い所を指さした。
「鹿児島まで、今から乗れる便を2枚ください」
これは逃ではなかった。
40満期で迎えた、親という役割からの退職だった。
半が過ぎた。
鹿児島の辺の町で、子と茂は古い平を借りた。保証は10万円、賃は2万円。隙の入るさなだった。
最初の1ヶ、茂は壁の染みを見つめて座るだけだった。子は央の魚の裏を叩いた。
「何でもします。皿洗いでも掃除でも、何でもやらせてください」
110、真のにを浸し、魚の臭さが染みついた皿を洗った。
けれど、その匂いは嫌ではなかった。
霞が言った老臭より、この魚の匂いの方が1000倍も正直で尊い。