"雨の美容室ローズ" 第3話
「母さん……母さん、どこったの」
美佐さんには信じられませんでした。
の曜にも、美佐さんは母に会っていたのです。いつもと変わらない母でした。お茶をみながら所の話をして笑い、「また来なさいよ」と言って送りしてくれました。
あの母が、どうしてこんなふうに消えてしまうのでしょう。
刑事は、泣き崩れる美佐さんに静かに声をかけました。
「お嬢さん、落ち着いて聞いてください。お母さんに最、変わった様子はありませんでしたか。誰かと会うとか、どこかへくとか、そんな話をしていませんでしたか」
美佐さんは涙を拭いながら、懸命に記憶をたどりました。
「いえ、いつもと同じでした。何も、何も変わったことなんてありません。母はただ、いつものようにおをやっていただけです」
「お母さんに古いりいはいませんでしたか。昔の友とか、くの親戚とか」
美佐さんは言葉に詰まりました。
考えてみれば、自分は母の「母としての顔」しからないのです。
母が娘だった頃、若い女性だった頃にどんなを歩んできたのか。どんなと会い、どんないを胸にしまっていたのか。そんなことを、ちゃんと聞いたことがありませんでした。
その悔は、この先い、美佐さんの胸にくのしかかることになります。
は、そのも次のもり続きました。
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警察はしず子さんの方を懸命に追いました。隣の聞き込みをし、川や用を捜し、空きや裏も調べました。
けれど、しず子さんはきた姿でも、そうでない姿でも、どこからも見つかりませんでした。
まるでに溶けて消えてしまったかのようでした。
商のたちは々に噂しました。
「あんないいが、体どうして」
「事件に違いない」
「いや、きっと何か事があって、自分から姿を隠したんじゃないか」
けれど、確かなことは何1つ分かりませんでした。
ただ1つ、町の々のには、赤い庇のだけがぽつんと取り残されていました。
かりの消えたガラス戸の向こうには、止まったままのハサミと、もう乾ききったタオルが、いつまでもあのの朝のまま残されていたのです。
そして誰もまだりませんでした。
この消えた女性の謎を解くたった1つの鍵が、のの夕方、このを訪れた見慣れぬ1の客のに、すでに隠されていたことを。
しず子さんが姿を消してから、何かが過ぎました。
梅はまだけず、川の空には相変わらずのがかかっていました。それでも商の々は、のを縫っていつもの暮らしを続けていかなければなりません。
百は野菜を並べ、魚は氷を敷き直しました。田所さんの干物も、今も先をぼうきで掃いています。
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けれど、隣のローズだけは、かりが消えたままガラス戸を閉ざしていました。
警察の捜査はに続けられていました。
刑事は若い刑事を伴い、商を1軒1軒訪ねて回りました。しず子さんが消えたの、つまり曜の夕方、にどんなが入りしていたのか、そのがかりをつかむためです。
「ローズさんに最にお客が入ったのは、いつ頃でしょうか」
は、向かいでを営む女将、本さんに尋ねました。
本さんは60代半ばの、よく気のつくでした。商のことなら何でもっていると評判のです。
本さんはしばらく首をかしげて考えていましたが、やがて何かをいしたように言いました。
「そういえば、あのの夕方、ローズさんに見かけない男のお客が入っていくのを見ましたよ」
の目が、すっと細くなりました。
「見かけない、というのは」
「ええ。この辺りのじゃありませんね。私はこの商でくをやっていますから、お客さんの顔は抵覚えているんですよ。だけど、あのは見たことのない顔でした」
「どんなでしたか。の頃や、なりは」
本さんは記憶をたぐり寄せるように、ゆっくりと話し始めました。
「は、そうねえ、50歳くらいかしら。痩せて背のいでした。でも、なんだか顔が悪くて、ずいぶん疲れているように見えました。
紺の着を着て、には何も持っていなかったといます。