"橋の下で見つけた孫" 第3話
里子は湿ったを踏みしめ、歩にんだ。は震えていた。それでも止まれなかった。
「剣太、何があったの? 何があったのよ」
その声を聞いた瞬、剣太のの壁が崩れた。
彼は膝から面に崩れ落ち、両で顔を覆った。
「母さん……ごめん。全部、全部俺のせいなんだ」
押し殺した泣き声が、たいのに響いた。
美咲は父親に駆け寄り、その肩にしがみついた。
「パパ、泣かないで。おばあちゃんがいるから。おばあちゃんが助けてくれるよね」
里子は2を見つめた。
3失ったとっていた息子と孫が、目ので震えている。
その瞬、里子ので何かが決まった。
もう、この2をここに置いてはいけない。
ののたいので、里子は剣太と向かいって座っていた。
目のでは、剣太が破れた袖で美咲の汚れた顔を拭っている。そのは震えていたが、娘を傷つけまいとするように、とても優しかった。
里子のる剣太は、背がくがっしりとしていて、いつも太陽のように笑っていた。けれど今の彼は、痩せこけ、疲れ果て、埃にまみれ、別のように見える。
ただ、瞳だけは変わっていなかった。
疲れきってはいるが、里子が35かけて育ててきた息子の、あの優しさに満ちた瞳だった。
美咲は父親の体に寄り添い、片目の形を抱きしめながら、助けを求めるように里子を見つめている。
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里子は2を抱きしめたかった。けれど、そのにらなければならなかった。
なぜ、こんなことになったのか。
その、3の記憶が、崩のように里子のへ押し寄せてきた。
それは、よくれた曜の午だった。
里子は鎌倉の自宅のさな台所で、鍋のの筑煮をかき混ぜていた。剣太の好物だ。久しぶりに族全員が集まる夜で、里子は自然と元を緩めていた。
当3歳だった美咲も、きっとぶだろう。
その、玄関のドアが乱暴にけ放たれた。
く慌ただしい音がづき、次の瞬、台所の入りに剣太がっていた。ろには嫁のゆかりがいた。彼女の目は赤く、泣いていたようだった。
けれど里子は、その仕に違を覚えた。
被害者を演じる女優のように、ゆかりは剣太の腕にすがりついていた。
剣太はダイニングテーブルにの鍵を投げつけた。い音が響き、里子のが止まった。
「母さん、こっち来て。話がある」
氷のようにたい声だった。
里子がリビングへくと、剣太は彼女を指差した。
「とぼけるなよ。なんでゆかりの悪を所に言いふらしてるんだ」
「悪?」
「怠け者だとか、娘の面倒も見られないとか、俺のを使い込むだけだとか、言ったんだろ」
里子は凍りついた。
そんなことを言った覚えはなかった。確かに、ゆかりの言にを覚えたことはある。
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けれど、悪を込めて所に言いふらしたことなどない。
里子が説しようとした、ゆかりがすすり泣きながらをいた。
「剣太、もういいの。私、ことをきくしたくないって言ったのに……でも、もう耐えられない」
ゆかりは涙を拭いながら続けた。
「今朝だって、お義母さん、私が美咲を公園に連れてこうとしたら、ガソリンの無駄遣いだって言ってかせてくれなかったのよ」
「違うわ。週末はが混むからって言っただけじゃない。禁止なんてしていないわ」
里子の声は震えた。
しかし剣太は、里子の言葉を遮った。
「もういい。母さん、ゆかりから全部聞いたんだ。あんたは、ゆかりの実は貧乏だとか、嫁にを渡すのは馬鹿のすることだとか、言ったんだろ」
1つ1つの言葉が、鋭い刃となって里子の胸に刺さった。
里子は剣太にづき、そのを取ろうとした。
「剣太、聞いて。私はそんなこと……」
けれど剣太は歩ずさった。まるで見らぬを避けるように。
「今から俺のに関わらないでくれ」
彼は歯をいしばりながら言った。
「たとえ端で物乞いすることになったとしても、2度とあんたを頼るもんか」
その言葉が、里子の臓を凍らせた。
台所から漂う筑煮のりが、ひどく虚しくじられた。
剣太はゆかりのを取り、2階へがった。クローゼットをける音、スーツケースに荷物を放り込む音が響いた。
寝のベッドの隅では、美咲がさな形を抱いて泣いていた。