"退職金を狙った夫" 第2話
子はそう決めた。それより先に、腹の底で静かに理解していた。
このは最初から、私を連れていくつもりがないのだ。
そのの夕も、昭雄はいつも通り無だった。子もいつも通り事をした。煮物を温め、噌汁をよそい、箸を並べる。
けれど胸のでは、何かいものが静かに形を作り始めていた。
あなたに計画があるなら、私にも考えがある。
翌週、子は1で図館へ向かった。棚のでし迷い、それから「婚」「財産分与」とかれた本を3冊に取った。誰にも気づかれないようにカバンの底に入れ、に持ち帰った。
その夜、昭雄が眠った、子は台所のテーブルに本を広げた。蛍灯のいので、ページを1枚ずつめくる。法律の言葉は難しかったが、子はゆっくり読みめた。
婚姻に築いた財産は、夫婦の共財産として分与請求ができる。
そのページに差し掛かった、子のが止まった。
退職も対象になる能性がある。
その文を、子は3度読み返した。元に力が入った。泣くことより先に、考えることがあった。
子はページにさな折り目をつけた。それは誰にも見えないほどさな印だった。けれど彼女にとっては、決の印だった。
翌朝、昭雄がいつも通り玄関をていくのを見送ると、子はすぐに話をに取った。
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「相談したいことがあるのですが、弁護士の先に度お話を聞いていただけますか」
受話器を握るに、もう迷いはなかった。
昭雄が職で部に指示をしていたちょうどその頃、子の計画は静かにき始めていた。
弁護士事務所をた子の取りは、来たよりし軽かった。
相談にくは怖かった。婚という言葉をにすることも、法律の話をすることも、自分には関係のない世界だとっていた。
けれど先の話を聞き終えた、初めて分かった。
この国の法律は、38働き続けた妻の側にも、ちゃんとっている。
それから子は変わった。表面は何も変わらない。朝ご飯を作り、洗濯をして、昭雄を送りす。いつも通りの毎だった。
けれど昭雄が玄関をたのだけは、子はまったく別のになった。通帳を確認し、保険証券を探し、宅ローンの類を理した。弁護士から言われた準備を、1つずつ丁寧にめていった。
そんなある、女の敬子から話がかかってきた。
「お母さん、最どうなの?体は丈夫?」
に娘の声を聞いた瞬、子の胸の奥が詰まった。
「丈夫よ」
そう答えながら、子はので何かが揺らぐのをじた。この子たちに何も言わずにめていいのだろうか。もし昭雄が先に子供たちに話を通していたとしたら。
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それでも、まだ言えなかった。
今はまだそのじゃない。
そう言い聞かせて、子は話を切った。言葉にしてしまえば、自分の気持ちが崩れてしまいそうな気がした。受話器を置いた、子はしばらくそのでけなかった。
その夜、夕の席で昭雄がぽつりと言った。
「来からし帰りが遅くなる」
子は顔をげた。
「何かあったの?」
「そんなことはない。ただ引き継ぎが増えてるだけだ」
昭雄の目が瞬泳いだ気がした。子はそれ以何も言わなかった。
けれど胸のでは、確信にいものが固まっていった。引き継ぎという言葉。1LDKのメモ。柔らかい話の声。それらが1本の線でつながる覚があった。
その夜、子はなかなか眠れなかった。目だけが冴えていて、井のシミをずっと数えていた。布団ので何度も寝返りを打つ。昭雄の寝息だけが、壁の向こうから聞こえてくる。
夜に起きがり、弁護士からもらった類をスマホのかりだけで確認することも増えた。
このので、昭雄が眠っているにも、子の準備は着々とんでいた。
ただ1つだけ、子にはまだ決めきれないことがあった。
子供たちに、何を、いつ話すか。
その問いへの答えは、ったよりく来ることになる。けれど、そのの子はまだらなかった。
子供たちが2とも揃う週末を、昭雄がどこかで静かに待っていたことを。
その週末、子供たちが帰ってきた。
女の敬子と、次女の由美。