"多摩川に沈んだ食堂" 第10話
その事実は、この絶えることなく流れる川のように、これからも消えずに残っていくだろう。
宮本は川に向かってくをげた。
そして、ゆっくりとかかとを返した。
それからしのある夕暮れ、緑商を1の若い女性が歩いていた。
藤だった。
別の用事でくまで来たついでに、彼女はふとこの商へを向けていた。なぜだか無性に、あの所を見ておきたくなったのだ。
アーケードの蛍灯は相変わらずほとんど切れていた。いているも数えるほどしかない。買い物客の姿もまばらだった。
その真ん、オンスク堂のあった所に藤はたどり着いた。
シャッターはりたままだった。錆びついて、もう2度とくことのないシャッター。ガラス戸にかれた「定」のい文字も、すっかりかすれていた。
ここで、かつて1の女性が温かい飯を炊いていた。
異国ので過を語らず、ただ目のののために料理を作り、おまけの鉢をし、誰もがち寄れるの休まる居所を作っていた。
藤は閉ざされたに向かって、静かにをげた。
会ったことのないへ。
けれど確かに、自分のに何かを残してくれたへ。
「帰れてよかったですね」
さく呟いてから、藤は顔をげた。
そしてまた、ゆっくりと歩きした。
商のアーケードので、彼女の音がこつこつとざかっていく。
川は今も変わらず流れている。
その流れは、このさな町のしみも、優しさも、すべてをそっと包み込みながら、へと向かっていく。
逃れてきた1の女性が、ここにきていた。
その確かなぬくもりだけを、に残して。