"多摩川に沈んだ食堂" 第9話
オンスクの遺骨は、町れのさな寺で弔われることになった。
寄りのない女性だった。母国に族がいたのかもしれないが、それを確かめる術はもうなかった。だから彼女を見送るのは、、彼女と縁のあった野町の々の役目となった。
ささやかな見送りだった。
寺のに集まったのは、数ほどの老いた々だった。皆、かつてオンスク堂に通った常連たちである。
腰の曲がった老、杖をついた老女。13という歳は彼らをさらに老いさせていたが、その顔には様にいしみと、どこからかな表が浮かんでいた。
野もいた。
あの団で暮らす老もいた。
皆、オンスクのことを忘れていなかった。
温かい飯をくべさせてくれたさな堂。たどたどしい言葉で、誰よりも客の11を気にかけてくれた。用がなくてもついが向いてしまう、の休まる居所を作ってくれた。
「オンスクさん、やっと帰ってきたね」
誰かがぽつりと言った。
「かったね。本当にかった」
すすり泣く声が、あちこちから漏れた。
野は遺のにみると、々とをげた。曲がった腰をさらに折り、い、顔をげなかった。
「オンスクさん、すまなかった。あんたのことを、ちゃんと調べてもらえなかった。13ものに1で、寂しかったろう。
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辛かったろうな」
野のしわだらけの頬を、涙が伝った。
「けど、もう丈夫だ。みんな、あんたのことを覚えてる。あんたの煮魚のも、おまけの豆も、誰も忘れちゃいないよ」
線の煙が静かにちのぼっていった。
その煙の向こうに、オンスクの遺がある。、商の催しのに撮られた1枚きりの写真だった。しはにかんだような笑顔で、オンスクはこちらを見ていた。
その表は、13、の厨で客に鉢を差ししていたと何も変わっていないように見えた。
見送りには、宮本と藤もそっと列席していた。
2は部の隅にち、その様子を静かに見守っていた。
これほどくのに惜しまれ、悼まれるだったのか。
宮本は改めてそうった。
寄りもなく、過も語らず、異国の片隅でひっそりときた女性。けれど彼女は決して孤独ではなかった。この寂れたさな町で、たくさんののに、確かに温かいものを残していた。
逃れてきた1の女性が、確かにこの町でき、々にされていた。
その事実だけは、13のが流れても消えていなかった。
「宮本さん」
藤が隣でさな声で言った。
「私、この仕事をしてよかったです。オンスクさんを、ちゃんと帰してあげられて」
その目は赤く潤んでいた。
宮本は黙って頷いた。
13、胸の奥にしまい込んだ、あのもやもやとした悔。
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それが今、ようやく溶けていくのをじていた。
あの、自分には何もできなかった。の判断にただ従うしかなかった。
けれど、その残りを13抱え続けてきたからこそ、川から庫がてきた、自分はもう1度ちがることができた。
遅すぎたかもしれない。
だが、にわせることはできた。
オンスクをのから連れ戻すことができた。
そのの暮れ、宮本は定のを迎えた。
最の勤務を終えた、宮本はまっすぐに帰る気になれなかった。に乗り、野町へ向かった。
のよくれただった。
空は青く、空気は張り詰めるようにたい。宮本は1、摩川の堤防にった。
川は昔と何も変わらず流れていた。枯れの川敷では、乾いたが川にさわさわと揺れている。面はの差しを受けて、きらきらとっていた。
13、この川のそばに1の女性が埋められた。
そして今、その女性はようやくここから解き放たれた。
くで子どもたちのはしゃぐ声が響いていた。で何かの子どもがり回っている。の澄んだ夕暮れ。ありふれた、けれどかけがえのない町の1が暮れていこうとしていた。
宮本は川の流れをい見つめていた。
「オンスクさん」
ぽつりと呟いた。
「遅くなって、すまなかったな。でも、もう丈夫だ」
たい川が、髪の髪をそっと撫でた。
逃れてきた1の女性が、確かにこの町でき、々にされていた。