"多摩川に沈んだ食堂" 第4話
自分のでまた別のへ移ったんだろう」
宮本は内、納得していなかった。
財布も通帳も印鑑も置いたまま、もをけるつもりで厨を片づけていた女性が、着の着のままどこかへ消える。そんなことがあるだろうか。
けれど当の宮本はっ端だった。の判断に異を唱える力はなかった。
その違を、宮本は13、胸の奥で抱え続けてきた。
宮本は報告をに取り、ゆっくりちがった。
そのの夕方、彼は刑事課の部を訪ねた。
「課。13の方の件です。この女性の事件、私にもう1度調べさせてもらえませんか」
課は類から目をげた。
「宮本さん、あなた定でしょう。今さらそんな古い件を掘り返さなくても」
「掘り返したのは、川の方です」
宮本は静かに言った。
「庫がてきた以、放ってはおけません」
課はしばらく宮本を見ていたが、やがてため息をついた。
「分かりました。ただし、若いのを1つけます」
呼ばれたのは、藤という若い女性刑事だった。26歳。背筋が伸び、目にまっすぐな力があった。
宮本は苦笑した。
「この事件が起きた、あんたはまだ学だな」
藤は静かに頷いた。
「だからこそ、りたいです。13も答えを待っているがいるなら、何があったのかりたいです」
宮本はその言葉に、し胸を打たれた。
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こうして、13の事件は再びきした。
宮本と藤の再捜査は、まず13の資料を読み返すことから始まった。
倉庫の奥から運びされた段ボール箱は、うっすら埃をかぶっていた。には当の捜査記録が黄ばんだまま詰まっていた。聞き込みの調、現写真、方者の届け。
それらを2は1枚ずつ机に広げた。
宮本は当の記憶をたどりながら資料を確かめ、藤はまったく予備識のない目で文字を追っていった。
そして、その真っさらな目が、見落とされていたものを拾いげた。
聞き込みの調を丹に読み込んでいた藤が、ある1枚のでを止めた。
「宮本さん、これ、ちょっと見てもらえますか」
それは当、オンスクのの常連だった1の老から取った調だった。黄ばんだに、当の捜査員の字で聞き取りの内容が記されている。
その文面の最に、こんな節があった。
「なお、本曰く、失踪の数週から、李はをいつもよりく閉めることがくなっていたとのこと。理由を尋ねても李は確に答えなかった。証は、李が何かに怯えている様子だったとじたと述べる。ただし、具体な根拠はなく、証の主観によるものとわれるため、参考までに記す」
藤は顔をげた。
「失踪の、オンスクさんは何かに怯えて、をじまいしていたってことですよね」
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宮本は調を受け取り、じっと文面を見つめた。
「ああ」
「もし自分ので町をていったなら、怯えるというのは変です」
当、この証言はほとんど取りわれなかった。証の主観として処理され、資料の隅に追いやられていた。
けれど13、改めて読むとが変わる。
オンスクは失踪、何かを恐れていた。をく閉めるほどに。
その「何か」は何だったのか。
2は次に、川から見つかった帳を調べ始めた。
帳の解読にはがかかった。と湿気でふやけたページは、めくるたびにパリパリと音をて、し力を入れれば破れてしまいそうだった。専の係に頼み、乾かし、え、ようやく文字を読める状態にした。
そこにかれていたのは、オンスクの々の記録だった。
そのの仕入れ。売の計算。客の誰に煮物をめにしてやったこと。町内会の予定。米への支払い。
つましい暮らしの覚えきが、たどたどしい本語で几帳面に綴られていた。
所々に、母国の文字が混じっていた。本語ではきにくいいを記す、オンスクはまれ育った国の言葉に戻ったのだろう。
「宮本さん、この記号、何度もてきませんか」
藤が指差したのは、ページのあちこちに繰り返し現れる1つのアルファベットだった。
K。
その文字は、付のそばにぽつんとかれていることがかった。
そしてその横には、決まって額が記されていた。