"5500億を動かした手" 第7話
やがて彼女は顔をげた。
「育ててくれた母と相談してから、お返事させてください」
「もちろんだ。急ぐ必はない」
翌週、リンカから連絡があった。
島の会社で働かせてほしい、と。
さよにすべてを打ちけたところ、彼女は涙を流しながら言ったという。
「あなたのその優しさは、きっとまれ持ったものだよ。血はつながっていなくても、あなたは私の自の娘だよ。胸を張って、しい所へっておいで」
それから3ヶ。
リンカは島の会社で働き始め、取引先からい評価を受けるようになった。
話を聞く力が素らしい。
誠実な対応に信頼が持てる。
が報告を差しすと、島は静かに笑った。
「あの子の力は、数字では測れない種類のものだからな」
半の。
島はリンカとさよを連れ、の見えるレストランにいた。施設をた若者たちの就労支援プログラムの第1期15名が研修を終え、それぞれの配属先で働き始めただった。
窓ののは、夕に染まっている。
さよは涙ぐみながら言った。
「島さん、本当にありがとうございます。リンカだけでなく、たくさんの子たちに希望をくださって」
島は首を横に振った。
「お礼を言うべきなのは私です。リンカさんをここまで育ててくださったのは、さよさん、あなたです。あの朝、リンカさんが見らぬ私に迷いなくを差し伸べられたのは、あなたがいをかけて注いできたがあったからです」
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さよはリンカのをそっと握った。
リンカもそのを両で包み込む。
その景を見て、島は胸の奥が温かくなるのをじた。
たいタイルので、識がのいていく、誰かが自分のを握ってくれた。
そのぬくもりの原点が、ここにあった。
リンカはを見つめながら言った。
「施設にいた頃から、誰かの役にてるになりたいってっていました。おも学歴もないけど、それだけは誰にも負けたくなかったんです」
島はグラスを持ちげた。
波が穏やかに寄せては返している。
あの朝、たいタイルのに倒れていた男に、1の女性がを差し伸べた。
その30分が、1の支のキャリアを終わらせ、15名の若者に希望を届け、孤独だった男のにもを灯した。
善は消えない。
踏みにじられても、報われないように見えても、のからへ渡り続ける。
そしていつか、像もしなかった所でを咲かせる。
島は窓のに広がる夕暮れのを見つめた。
「千鶴、見ているか」
誰にも聞こえない声で、彼はつぶやいた。
「俺はようやく分かったよ。に優しくあるというのは、正しいからじゃない。そうせずにはいられないがいるから、世界はまだ救われるんだ」
リンカとさよのは、今も静かになっていた。
そのぬくもりこそが、しい未来の始まりだった。
― 完 ―