"5500億を動かした手" 第6話
昼の全が震えた。
そのの午、本部は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
5500億円の預移管という代未聞の事態に、取以の経営陣が緊急役員会をいた。型モニターに防犯カメラの映像が映しされると、会議の空気は凍りついた。
そこには、島を救護するリンカの姿があった。
そしてその男性こそ、5500億円の預者・島達也である。
役員たちは言葉を失った。
昼は全から汗を流し、取のでち尽くしていた。
「命救助で5分遅れたの話を遮り、当最級の預者の命の恩を即解雇した。しかも、その理由が経歴への偏見だったと」
昼は必にをいた。
「お言葉ですが、採用基準として経歴をするのは……」
「黙りなさい」
取の声が会議にく響いた。
「融関のとして、それ以に1のとして、恥ずかしいとはわないのか」
昼はを見つめた。
「昼孝介。本付で梅ヶ丘支の任を解く。今の処分は調査委員会の結論をもって通達する」
「そ、そんな。私はのことを考えて……」
「功績というなら、今1で失った信用の方がはるかにきい。5500億円だけの問題ではない。この件が表にれば、命救助をしたを経歴で差別し、即解雇するだと烙印を押される。その損失を計算できるか」
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昼は何も答えられなかった。
会議をる背は、つい数まで支で部を鳴りつけていた男とはえないほどさく見えた。
恐怖でを支配してきた男が権力を失った瞬、周囲に残るのは同ではなく、堵のため息だけだった。
同じの夕方、島はと2でリンカのアパートを訪ねた。
駅から歩いて15分。宅の奥にある古い造アパートの2階。壁の塗装はところどころ剥がれ、階段のすりは錆びていた。
しかし、玄関先のさな鉢には、とりどりのが丁寧に植えられていた。
インターフォンを押すと、しがあってからドアがいた。
「はい。どちら様でしょうか」
リンカはあせたTシャツにジャージ姿だった。目の周りはわずかに赤い。それでも笑顔を作ろうとしている。
島の顔を見た瞬、リンカはきく目を見いた。
「あ、駅で倒れていらした方ですよね。お体は丈夫ですか」
自分が仕事を失ったばかりだというのに、真っ先にたのは相の体調を気遣う言葉だった。
島はくをげた。
「あなたのおかげで、事には至らなかった。あのは本当にありがとう」
「いえ、お礼なんて。私は当然のことをしただけです」
「君ならそう言うとっていた」
くの喫茶で向かいって座ると、が事を説した。
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KTキャピタル。
5500億円。
梅ヶ丘支で起きた処分。
リンカはコーヒーカップを持つを止め、信じられないという顔で島を見た。
「私が助けた方が……」
「あなたは私の命を救ってくれた。そして、そのせいで切な仕事を失った」
リンカの目に涙が浮かんだ。
けれど彼女は唇を噛み、泣くまいとした。
「島さん、私は悔していません。あので素通りすることはできませんでした。たとえ同じことが起きても、きっとまた同じことをします」
島は静かにうなずいた。
「それこそが君のさだ」
そして、まっすぐにリンカを見た。
「私の会社に来ないか。学歴も経歴も問わない。あなたが持っている性は、どんな資格や肩きより尊い」
リンカは驚いたように目を丸くした。
しかし、すぐに静かに首を横に振った。
「ありがとうございます。でも、助けていただいたから仕事をもらうのは違う気がします。私は自分の力でみたいんです」
島は瞬驚いたが、すぐに微笑んだ。
「では言い直そう。私の会社には、の話を本当に聞けるが必だ。施設をた若者たちの就労支援を始めたい。その仕事を、あなたにお願いしたい。対等な仕事としてだ」
リンカの表が変わった。
「施設をた子たちの就労支援……」
「ああ。あなたのようなが、2度と経歴だけで見されない仕組みを作りたい。
私にはない点が、あなたにはある」
リンカはしばらく黙って、自分のを見つめた。
毎の仕事で荒れた、さなだった。