"「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨" 第10話
青森の岸線と消された原本
純のキャップというかぬ物証を掴んだ渡辺は、次なる急所を攻めるべく、〇の遺言の作成経緯を徹底に洗いました。
郎が残した「柿のを切るな」という公正証遺言。 その公証続きを担当した法律事務所の元記係、鈴誠という男が、現は青森県弘の沿いの寒で暮らしをしていることを突き止めたのです。
激しいが吹き荒れる、渡辺は幹線とローカル線を乗り継ぎ、青森の本に面した荒涼とした集落へりちました。 トタン根の古びた平の引き戸をけると、部の奥には、末期の肺気腫で酸素吸入器をつけた代半の鈴が横たわっていました。
渡辺はに正座し、懐から枚の写真を取りして並べました。 母娘の遺骨の写真と、のから見つかった純万のキャップの写真でした。
「鈴さん。〇〇、郎があなたの事務所を訪れて作成した、あの公正証遺言のことを聞きに来ました」
鈴は濁った目で写真を見つめ、やがてヒュウヒュウと喘鳴を漏らしながら、顔をで覆って泣き崩れました。
「……ずっと、にてくるんだよ。 さな女の子たちが、だらけので私の枕元にって泣くんだ……。 私は、に神の伝いをしてしまったんだ……」
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鈴は震える体を引きずり、押入れの奥の古い葛籠(つづら)から、錆びついたクッキー缶を取りしてきました。 蓋をけると、黄ばんだ類の束の底から、枚の便箋が現れました。
公正証遺言を作成する際、依頼者が持参した「自の原案メモ」でした。 公証役の規定では破棄されるはずの類を、鈴はあまりの異様さに恐怖を覚え、ひそかに元に残していたのです。
そこには、郎の震える跡で、こう殴りきされていました。
『庭の央の柿のより、半径メートル以内のの掘削を永久に禁止する。 何たりとも、いかなる理由があろうとも、根を傷つけることを許さない。 これに違反した相続は、すべての相続権を失うものとする』
そして、その用のに記されていた受付のスタンプに、渡辺の目が釘付けになりました。
『〇〇 午分』
母娘が殺害されたとされるの夜がけた、まさに翌朝の朝でした。
「あのの朝のことは、んでも忘れられないよ」 鈴は掠れた声で語り始めました。
「砂りのの、が事務所のドアを壊すような勢いで叩いたんだ。 ズボンの裾も靴も、赤黒いでびっしり汚れていて、全から臭い消の匂いがち込めていた。 あいつは札束の詰まったボストンバッグを机に叩きつけ、『今すぐこの条件で公正証を作れ! 付は昨の付にしろ!』と私を脅したんだ……」
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渡辺は拳を握りしめ、魂が震えるのをじました。
の朝、郎は京にいた。 庭にの遺体を埋め、を撒き、そのでまみれのまま公証役へ駆け込んでいたのです。
沖縄の学会に席していたという完璧なアリバイは、付を偽装し、からをばら撒いて関係者を抱き込んで捏造した、完全なペテンだったのです。
「鈴さん、よくぞ残しておいてくれました。これをお借りします」 渡辺が々とをげると、老は枯れのようなで渡辺のを握り返し、涙を流しました。
「刑事さん……頼みます。あの子たちの魂を、どうか救ってやってください」
真実を封じ込めていた最のピースが、ついに揃いました。 渡辺は原案メモを胸ポケットにしっかりと収め、暴の吹き荒れる夜の津軽を、京へ向けてりしました。