"「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨" 第9話
塊のから現れた純
令状却から週。 捜査本部の気は目に見えて失速し、層部からは「これ以の無駄な捜査は打ち切れ」という圧力がまっていました。
しかし、渡辺は諦めていませんでした。 彼は毎晩、科捜研のくにある法医学分析へ通い詰めていました。 現から持ち帰った、柿のの最部の粘層――遺骨が横たわっていた直の赤黒いの塊を、最の材で洗い直すためでした。
「渡辺さん、もう個以ののコンテナを洗いましたよ。何もません」 徹夜続きで目を充血させた主任研究官が、疲れた声で言いました。
「頼む、最の個を調べてくれ」 渡辺はをげました。
「母親の子さんの、の骨があった所のだ。 解剖記録を見た。子さんのは、指の骨が折れ曲がった状態で固まっていた。 がぬ際、指を折るほどの力で何かを握りしめるのは、そこに『奪い取ったもの』があったからだ」
研究官は溜息をつき、次元解像度CTスキャナのトレイに、拳ほどのきさの化した塊を乗せました。 スイッチが押され、周波のモーター音が響きます。
スライスされた断層画像が、型モニターに次々と映しされていきました。 何層ものとのが流れていく、ある断面で、研究官のがピクッと止まりました。
広告
「……ん?」
塊の真ん、砕けたの指骨の隙に、異様な密度を示す細いがく浮かびがっていました。 X線をく反射する、質な属のでした。
「何か入ってるぞ……! 特殊超音波洗浄槽を回せ!」
研究官たちがめきちました。 特殊な薬液を満たした槽に塊を沈め、超微細な振での粒子をしずつ剥させていきます。
。 が完全に溶け落ち、槽の底に沈んでいた物体を、研究官が滅菌ピンセットで慎につまみげました。
無灯のいのに現れたのは、息を呑むほど美しい、純の輝きでした。
それは、万のキャップでした。 とのに埋もれていたにもかかわらず、純製の属は錆びることなく、作られたのままの眩い沢を放っていました。
研究官が拡鏡を覗き込み、キャップのリング部分に刻まれた文字を読みげました。
「刻印があります……『K・T 2004.03』」
イニシャルと、製造。 渡辺は震えるでスマートフォンを操作し、その万の輸入代理へ緊急照会をかけました。
数、代理から送られてきた顧客台帳の控えを見た渡辺の全に、流のような衝撃がりました。
〇〇、そのドイツ製の最級純万を特注で購入した物は、本国内でたったしかいませんでした。
『郎』
の退任記として、自らのイニシャルを刻ませて特注した、世界に本しかない万でした。 受け取りは〇〇。 母娘が失踪する、わずかのことでした。
子さんは、を鈍器で乱打される激痛と恐怖ので、必に犯の胸ぐらを掴んでいたのです。 そして、老の胸ポケットに差してあった万のキャップを力任せに引きちぎり、自らの折れた指のに握りしめたまま、たいのへと潜っていったのでした。
「見つけたぞ……」 渡辺の目から、い涙がポロポロとこぼれ落ちました。
にゆく母親が、の警察へ渡すために命がけで遺してくれた、決定な「告発状」でした。