"「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨" 第1話
引き裂かれた根と転がりた蓋骨
〇の晩。 京・品川の閑静な宅の角は、面の埃との唸り声に包まれていました。
再発に伴う古い敷の解体事がみ、このを見守ってきた古な本が、次々と瓦礫へと姿を変えていました。 その敷の真んに、が腕を回しても抱えきれないほど太い、本の老がそびえっていました。 齢を超える、見事な柿のでした。
「おい、さっさとそのも引っこ抜いちまえ!」
敷の隅で級なコートの襟をて、焦りを含んだ声で現監督に指図していたのは、敷の主の男である健でした。 彼は革靴で面を苛たしげに踏み鳴らし、の操縦席に向かって顎をしゃくりました。
「親父はもう介護施設でボケて寝たきりなんだ。 『柿のを切る奴には遺産をやらない』なんて遺言状、誰が守るかってんだよ。 ち退きの保証が数億入るんだ、本ののために事を止めるわけにはいかないんだよ!」
図を受けたショベルカーが、黒い排気ガスを吐きしながらアームを振りげました。 巨な鉄の爪が、にく張り巡らされていた柿のの根元に、容赦なく突きてられます。
バキバキバキッ! 引き裂かれる根の鈍い破裂音が、庭に響き渡りました。
広告
が力任せにを引っこ抜いた瞬、根元のがきく崩れ落ち、のほどもある巨な穴がきました。 赤黒い粘質の塊のから、腐してボロボロになった分い軍用の防布が、裂け目を作って現れました。
その布の破れ目から、埃とともにい塊がガラガラと崩れ落ちてきました。
「うわっ……なんだこれ……!?」
操縦士が窓から顔をし、のに突き刺さった丸い物体に目を凝らしました。 次の瞬、操縦士の喉から、裂けるような鳴ががりました。
がこびりついたその物体は、の蓋骨だったのです。
それも、ひとつではありませんでした。 のものと見られるきな蓋骨のすぐ横に、拳ほどのさな蓋骨がつ、複雑に絡みった太い根のに挟まっていたのです。 さな骨の節々には、まるでそのものが逃げさないよう縛りつけていたかのように、細い根が幾にも巻きついていました。
操縦士はレバーを放りし、転がるようにしてからびりました。 まみれになりながら庭の隅へいずり、胃ののものを吐きしました。
「骨だ……! の骨が……子どもの骨まで埋まってるぞ!!」
現監督が震えるでスマートフォンを取りし、〇番を押し込みました。 静まり返っていたの空を切り裂くように、無数のパトカーのサイレンが現へと迫っていました。