みかん小説
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"昭和35年、上野駅に現れた二人の「ハルコ」" 第9話

返事のない所

子は、夜学の先に教わった所へをいた。姉に会いたいこと、族がどんな話を聞いていたか、そして今、自分も京にいること。責める言葉はかないと決めた。き終わると、便箋を度読み返し、封筒に入れた。

最初の数は、子もの階に泊まっていた。彼女は働きを探しているわけではないと言ったが、朝になると洗い物を伝おうとした。千代は「泊めてもらう代わりに働かなくていい」とはっきり伝えた。子は、恩を返さないと居所を失うとっていたのかもしれない。千代は、泊まる所を与えることと、労働を求めることを混ぜないようにした。

返事を待つあいだ、子はみのり堂で働き始めた。朝はの戸をけ、米をとぎ、そばつゆの鍋を洗う。千代は、初めて働く子にいきなりを任せず、の支度と洗い物から教えた。子は覚えがく、言われた仕事を丁寧にこなした。ただ、客ので注文を聞くときは、声がさくなる。

「お客さんに、聞こえるように言えばいいんだよ」

千代が声をかけると、子は「はい」と答えた。しずつ、ので自分の居所を作っていった。

子は、の仕事を覚えながら、毎晩、帳の端でいをいた。でべた夕飯、正が宿題を見せに来たこと、千代が仕込みの順を教えてくれたこと。

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族には、京での暮らしが求票の文だけでは伝わらないとったからだ。母親の返事には、弟がしい教科を受け取ったことがかれていた。子は、その教科の代を自分が送れるか、初めて具体に考えた。

最初の料がづくと、子の母親からもう通、が届いた。紹介所の久保田がを訪ね、「子の料はから送る約束だ」と説したという。母親は、娘が約束を破ったとっていた。子はを読んだあと、黙って帳に座った。

「に、私からをします。料は私が受け取ること、へ送る額は、働いてから決めることをきます」

「分かった。の料細も同封しよう」

私は、子の働いた数と料をにき、千代と緒に確かめた。事代と寮費を引いた額は、雇用通に記されたとおりだった。子は、その数字を何度も見た。

「これなら、いくらに送れるか、自分で考えられます」

返事が届くまで、数が過ぎた。その、子はの仕事をつずつ覚えた。朝の米の量、丼を置く棚、の順番。違えると千代が直し、次のには子が自分で直す。子は、仕事が終わるたびに、夜学の先へす礼状をき直していた。姉を捜す方で、今の暮らしを続ける準備もしていた。誰かが現れるまで、何もせずに待っているわけではなかった。

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子は、郵便受けを確かめるたび、が来ていないことを私に謝った。私は、返事をすかどうかを決めるのは姉の側だと伝えた。けれど、待つにとって、何も届かないが続くのは簡単ではない。子は、姉がを読んだか確かめるため、夜学の先にもう度連絡しようとした。千代は、それを止めず、ただ「返事を急がせない文にしなさい」と言った。子は葉に、会えなくても責めないこと、居所だけ分かればすることをいた。投函するに、子がその文面を読んだ。「私も母に、同じようなをきます。働いていることを伝えても、すぐ返事を求めないように」姉を待つ子と、族の返事を待つ子は、同じ卓袱台の端で葉をいた。とも、相に答えを迫るより、自分の居所をらせようとしていた。

その午、郵便配達が子宛ての返事を持ってきた。封筒は差欄が空だった。には、富美子の字でだけかれている。

「子が働き始めたなら、紹介所のに会ってはいけない」

子はそのを握りしめた。

「姉は、今も紹介所のを怖がっているんでしょうか」

私は、すぐに答えられなかった。便箋の裏には、もう、い鉛できされていた。

「曜の夜、砂の運沿いで待っています。ひとりで来て」

子は、姉に会うことを望んでいた。

けれど、ひとりでけという言葉のは、まだ分からない。私は、約束の所まで付き添うべきか、姉妹だけに任せるべきか、考え込んでいた。

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