"「このおばあちゃん、危ない」六歳の孫が見たもの" 第4話
町内会の頼み
翌の夕方、町内会の野さんが訪ねてきた。
「静子さん、しいいかな」
「どうぞ。お茶を入れますね」
「いや、すぐ帰るからここでいい。蛇田さんから聞いたんだが、菓子を受け取らないそうだね」
野さんは町内会の事をよく取りまとめてくれるだった。域のから頼られている方で、揉め事を避けたがるところもある。
「お気持ちはありがたいとっています。ただ、毎配るのは、蛇田さんのお財布にも負担ではないかと配なんです」
「蛇田さんのことは、俺も気にかけているよ。ご主をくしてから、にる会が減ったからね。お菓子を配るのが楽しみなんだろう」
「楽しみを取りげたいわけではありません」
「なら、し受け取ってあげたらいい。町内のことは俺が見ているから、配はいらないよ」
その言葉に、私は首を横に振った。
「会さん、蛇田さんが本当に楽しくて配っているのなら、もちろん受け取ります。でも、無理をしているのなら、そこは確かめたいんです」
野さんは困ったように眉を寄せた。
「静子さんは、昔から数字に細かいからな」
「計簿をつけているだけです」
「の気持ちは計簿では測れないよ」
そう言い残し、野さんは帰っていった。
私は玄関にったまま、しばらくその背を見送った。蛇田さんの配をしているのは、私だけではない。
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けれど、皆が「寂しいのだろう」「楽しみなのだろう」と考えるだけで、本に確かめたはいないようだった。
翌、私は蛇田さんのを訪ねた。
呼び鈴を押すと、しばらくして蛇田さんがてきた。
「静子さん、どうしたの?」
「しお話ししたくて」
「がってちょうだい」
台所の隅に、梅干しを漬けるきな甕が置かれていた。蓋のにはく埃が積もっている。棚のには、の梅干しの瓶がいくつか並んでいた。
「今は漬けなかったんですね」
「ええ。主がいたは、毎たくさん作っていたけれどね。今はべてくれるがいないから」
蛇田さんは、古い湯のみをつした。
「それで、お話って?」
私は、なるべく責めているように聞こえない言葉を選んだ。
「お菓子を毎のように配っているでしょう。おのこともあるし、疲れていないか配なんです。もしよかったら、また梅干しを分けてもらえませんか。私は、あの梅干しが好きです」
蛇田さんは湯のみを置いた。
「静子さん、私の楽しみを取らないで」
「取るつもりではありません」
「梅干しを配っても、誰も私の名なんて呼ばなかったのよ。『ありがとう』って言ってくれるけれど、次のには忘れてしまう。お菓子なら、子どもももんでくれるでしょう」
「蛇田さんの名は、お菓子がなくても覚えています」
「静子さんは、そう言ってくれるのね」
蛇田さんは線を落とした。
「でも、みんなは違うの。配るものがなくなったら、誰も私の名を呼ばなくなる。そううと、やめられないのよ」
私はすぐに返事ができなかった。
「静子さん、今はもう帰ってちょうだい。し疲れたの」
「分かりました。またお話ししましょう」
をる、私は度だけ振り返った。蛇田さんは玄関のにったまま、私に背を向けていた。