"「このおばあちゃん、危ない」六歳の孫が見たもの" 第3話
お菓子の名を呼ぶ
の朝、私はごみをしにった。集積所には、向かいのとめさんと、所の奥さんがいた。
「静子さん、おはよう。見て、これ。蛇田さんからいただいたおかきよ」
奥さんのが、さな袋を見せた。
「うちの孫も蛇田さんの名を覚えちゃってね。毎『蛇田のおばあちゃん、ありがとう』って言うのよ」
「それは蛇田さんも嬉しいでしょうね」
「そうなのよ。でも、私は甘いものを控えなきゃいけないから、もらっても困るんだけどね。断るのも悪いし、ありがたくいただいてるわ」
とめさんは、袋の裏を確かめるように見てから言った。
「蛇田さん、最ずっと配って歩いているねえ」
「私はお気持ちだけいただいているんです。毎だと、蛇田さんのお暮らしが配で」
私がそう答えると、奥さんはし困った顔をした。
「静子さんだけ受け取らないって、蛇田さんが気にしていたわよ。何か嫌われるようなことをしたのかしらって」
「嫌っているわけではありません。むしろ、配しているだけです」
そこへ、蛇田さん本が通りかかった。
「おはようございます。みなさん、今はがたいですね」
「蛇田さん、おはようございます」
私は挨拶をした。蛇田さんはずつにさな袋を渡していた。袋からてくるのは、ひとようかんや飴の袋だった。
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「静子さんにも、今は飴を持ってきたのよ。ちゃんにどうぞ」
「ありがとうございます。でも、うちは丈夫です。どうか無理をなさらないでくださいね」
蛇田さんは、笑顔を崩さなかった。
「無理なんてしていないわ。みんながんでくれるから、私も楽しいの」
「そうですか」
「静子さん、そんなに気を遣わなくてもいいのよ。私は本当に皆さんのぶ顔が見たいだけなの」
私は返事に迷った。
が誰かに何かを渡す、その気持ちまで断ってしまうのは寂しいことだ。けれど、相の暮らしが苦しくなるほど続けることは、優しさだけでは説できない気がした。
蛇田さんがってしまうと、とめさんがさく息を吐いた。
「ご主をくしてから、あのはずっとだろう。お菓子を配るのが張りいになっているのかもしれないね」
「それは分かっているつもりです」
「なら、受け取ってあげたらどうだい」
「受け取ることだけが、蛇田さんの寂しさを埋める方法なのかしら」
とめさんは、私の顔を見た。
「静子ちゃんは、いつも考えすぎるね」
「そうかもしれません」
その夜、計簿を見返した。からの初めまでは、梅干し、ぬか漬け、季節の野菜。以は、お菓子が続いている。
私はカレンダーを見ながら、にかかる額をざっと計算した。所のが軒。
毎百円分ずつ配ったとしたら、かで万千円ほどになる。実際には、もっと買っているもあるだろう。
で暮らす蛇田さんにとって、決してさな額ではない。
「あなた、私はたいのかしら」
仏壇ので、写真の夫に話しかけた。
「の気持ちは計簿では測れないわね。でも、無理をしているのなら、見て見ぬふりをするのも違うとうの」
写真の夫は、いつもの穏やかな顔でこちらを見ているだけだった。