みかん小説
本棚

"「このおばあちゃん、危ない」六歳の孫が見たもの" 第2話

ひとり暮らしのに届くもの

私は静子、歳。に夫を見送ってから、駅からしれた古いで暮らしをしている。

夫がいた頃は、朝起きるとまず台所から湯を沸かす音が聞こえた。私が起きるに夫が先に起きて、聞を取りにってくれていたのだ。

「今もいい気だな」

そう言いながら、夫は庭の鉢植えにをやる。私はその背に「朝ごはん、もうし待ってね」と声をかけた。

その何でもないやり取りが、今はのにない。

朝の台所は、湯のみをひとつ置くだけで済む。卓に向かいう子も、片方は空いたままだ。慣れたつもりでいても、夕方になると、の静けさが急ににしみることがある。

息子夫婦には歳になる娘、がいる。の母親である麻は、保育園の頃から「らないについてかない」「べ物をもらうは、お母さんに聞く」と繰り返し教えてきた。

はし慎な子だ。が気づかないようなさな変化を見つけることもある。

「ちゃんって、勘がいいのね」

所のたちは、そう言うことがあった。本は「なんとなく」と答えるだけ。私はそれを、子どもらしい観察力だとっていた。

の曜、が泊まりに来ることになった。

朝から布団を干し、好物の卵焼きの材料を買い、押し入れからさな毛布をした。

広告

が来るは、暮らしのがしだけ賑やかになる。

午、玄関の呼び鈴が鳴った。

「静子さん、こんにちは。蛇田よ」

隣の通りにむ蛇田さんだった。歳をし過ぎたくらいで、のに夫をくしたばかりだ。夫の葬儀のには、私もを届けにった。

蛇田さんはさな袋を差しした。

「これ、ようかん。お孫さんがいらっしゃるでしょう? よかったら受け取って」

「いつもありがとうございます。でも、毎のようにいただいては申し訳ないわ」

「そんなこと気にしないで。私は甘いものをべないのよ。所の子どもたちに配っているだけだから」

そう言って蛇田さんは笑った。

私は受け取った袋を、のに置いた。

「、お礼を言いましょうね」

は私のろに隠れた。

「いらない」

「。せっかく蛇田さんが持ってきてくださったのよ」

「ごめんなさいね。今はし眠いみたいで」

私はそう言って、代わりにをげた。蛇田さんは気にした様子もなく、「子どもは気まぐれだもの」と笑った。

「じゃあ、私は向かいのとめさんにも顔をしてくるわね」

蛇田さんが帰りかけたところで、私はふといした。

「にいただいた梅干し、とてもおいしかったです。ご主がお好きだったおなのかしら」

蛇田さんの笑顔が、ほんのしやわらいだ。

広告

「そうなの。あのは、塩のきいた梅干しが好きだったから。毎、たくさん漬けていたのよ」

「今は漬けなかったんですか?」

「今は、しね。作ってもべてくれるがいないでしょう」

その言葉を聞いた、私は蛇田さんが梅干しを持ってきたのことをいした。あの頃は、まだ作りのものを分けてくれていた。

蛇田さんが帰ると、は私の袖を握ったまま、袋を見つめていた。

「、ようかんいらないの?」

「ばあばのおせんべいがいい」

その夜、が寝てから、私は古い計簿をいた。

毎の買い物を記録する癖は、若い頃から続いている。母が「もらったものも、あげたものも、忘れないようにいておきなさい」と教えてくれたのだ。

。蛇田さんからようかん。、受け取らず。

そうき添えてから、私はしばらくを止めた。

甘いものをべないと言う蛇田さんが、どうして毎のようにお菓子を買って配るのだろう。

そのはまだ、答えをらなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: