"二十通の辞表" 第12話
取り調べの絶叫と失われた聖域
百周記宴会の華やかな気が嘘のように、所轄警察署の取り調べは、の壁と苦しい沈黙に支配されていた。
パイプ子に腰掛けた黒岩は、すっかり伸びた無精髭を震わせ、目のの机を激しく叩いた。
「俺は嵌められたんだ! あの娘が、俺を追いすために仕組んだ罠だ!」
担当のベテラン刑事が、ため息をつきながら分い捜査資料のファイルをめくった。
「往際が悪いな、黒岩さん。黒産の本社とあんたの自宅から、裏の管理台帳と隠し座の通帳がすでに押収されてるんだよ。過で億千百万円。あんたの個座にプールされていたは、すべて綾瀬楼の仕入れ代から正に増しされたものだ。黒産の社も、すべてあんたの指示だったと認めている」
「く、黒が……!」
黒岩の顔から血の気が引き、脂汗が顎から滴り落ちた。
「それだけじゃないぞ。ライバル企業へのレシピ売却の件だ。送信されたメールのIPアドレスは、あんたが厨の料理で使っていた私用パソコンと完全に致した。相先の役員からも、『黒岩から千万円で綾瀬楼の秘伝レシピを買い取らないかと持ちかけられた』と詳細な供述が取れている」
「あ、あれは……ただの冗談だ! 交渉の真似事をしただけで、本当に売る気なんて——」
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「冗談で済むかよ。派な背任未遂だ。老舗の信用と伝統をに変えようとしたんだからな」
刑事の徹な言葉に、黒岩はを抱えて呻いた。
かけて築きげたはずの「料理界の鎮」という虚飾のが、音をてて瓦解していく。
だが、黒岩にとって本当の獄は、警察の取り調べだけでは終わらなかった。
面会のアクリル板越しに対面した弁護士から告げられたのは、容赦のない現実だった。
「黒岩さん、綾瀬楼の代理弁護士から、損害賠償請求の訴状が届きました。横領された億千百万円の全額返還に加え、材の廃棄損害および老舗の信用毀損に対する慰謝料として、総額で億千万円の支払いを求められています」
「い、億千万……!? そんな、あるわけねえだろ!」
「隠し座の資産はすでに国税と警察によって差し押さえられています。ご自宅のマンションも競売にかけられることになるでしょう。さらに、国税局からは加算税を含めた追徴課税として、約千万円の納付通がています」
黒岩の界が、真っ暗に染まった。
も、蓄えた裏も、すべて奪われる。残るのは、かかっても返しきれない莫な借と、科者の烙印だけ。
「そ、そんな……。俺の腕があれば……所したに、どこかので雇ってもらえれば……」
弁護士は同のすら見せず、淡に首を横に振った。
「無理ですね。国宝の子玄先が、本料理協会の理事会で今回の事件を正式に報告されました。名料亭のレシピを売ろうとした料理を雇うなど、本のどこを探してもしませんよ。あなたの料理としてのは、完全に終わったんです」
「う……うわああああっ!」
面会に、黒岩の狂ったような絶叫が響き渡った。
自分の才能に溺れ、者を見し、貪り続けた欲の果て。
男が最にに入れたのは、たい鉄格子と、逃げのない破滅のだけだった。