"二十通の辞表" 第8話
暴かれた帳簿と赤灯の
「さて、料理のお話はここまでです」
私の声の温度が、さらに数度がった。
私はハンドバッグのから、分いクリアファイルを取りし、通用の壁にてかけてあった業務用の型ホワイトボードのに、磁で枚の類を貼り付けた。
そこに印刷されていたのは、緻密な折れ線グラフと、座の入記録だった。
「総料理。いえ、黒岩さん。あなたが過にわたり、懇の産卸『黒産』を通じてってきた、架空仕入れと材等級偽装の全記録です」
黒岩の目が、限界まで見かれた。
「な……な、何を……」
「は極めて単純でしたね。帳簿は最級の特等真昆布や然老を発注したことにして満額の代を綾瀬楼から振り込ませ、実際には等検の端材や凍の養殖エビを納品させる。そして、その差額から毎百万から百万円の現を、黒産の社からあなた個の裏座へキックバックさせていた」
私は淡々と類をめくっていった。
「過のキックバックの総額は、億千百万円。そのほか、厨から自宅へ持ち帰っていた級材の棚卸し被害額が、約千百万円」
「で、鱈目だ! そんな根拠のない言いがかりを信じるか!」
黒岩が唾をばして喚き散らした。しかし、私の元にある証拠のみは、そんな浅ましい虚勢など微も寄せ付けなかった。
広告
「鱈目ではありません。すでに先週、黒産の経理担当者から、裏作りの指示と現の受け渡し記録、そしてあなたの署名が入った領収の控えをすべて任で提していただいています」
「なっ……! 黒が……裏切ったのか……!?」
「裏切ったのではありません。彼らも警察の制捜査を恐れて、自首を選んだのです。……それから、もうつ」
私は最の枚、子メールのプリントアウトを掲げた。
「あなたが先、チェーンの役員宛てに送信したメールです。先代が命を懸けて完成させた、綾瀬楼の秘伝のタレと煮物汁の配レシピを、千万円で売却しようと商談をめていましたね」
広にいた全員が息を呑んだ。
ろの板たちすらも、顔を変えて黒岩からサッと距を取った。料亭の板にとって、の秘伝レシピをライバルに売りばすなど、業界から永久追放されても文句の言えない、最の禁忌であり裏切りだったからだ。
「お……! 黒岩さん、それ本当なのかよ!?」
「俺たちには『若女将を追いしてを乗っ取る』って言ってたのに、裏でレシピを売って自分だけ逃げる気だったのか!?」
「ち、違う! これは罠だ! 俺を陥れるための捏造だ!」
黒岩が狂ったように叫び、類を奪い取ろうと私にを伸ばした、その瞬だった。
ウーッ、ウーッ、ウーッ。
広告
けたたましいサイレンの音がの静寂を破り、通用ののに、台のパトカーと、黒塗りのワンボックスカーが滑り込んできた。
からりてきたのは、濃紺のスーツを着た数の男たち——警察の能犯捜査係の刑事たちと、京国税局の査察官たちだった。
「黒岩さんですね」
先の警部補が、懐から警察帳と逮捕状を徹に差しした。
「株式会社綾瀬楼に対する業務横領、および背任の容疑で逮捕状がています。ご同願います」
「う、嘘だろ……!? やめろ! せ! 俺は総料理だぞ! 俺がいなきゃ、このは今で潰れるんだよーッ!」
みっともなく暴れ、錠をかけられながらパトカーへと押し込まれていく黒岩。、厨の絶対君主として君臨していた男の権力は、あまりにも呆気なく、無惨に砕け散った。
赤灯がざかっていくのを見届けた、通用のに残されたのは、腰を抜かして面にへたり込んだの板たちだった。