"二十通の辞表" 第6話
の巨と凍りつく通用
通用のコンクリートの叩きのに、苦しい沈黙が落ちた。
「か、子……先……? なんで、あなたが……こんなところに……」
黒岩の声は完全にずり、喉の奥で刻みに震えていた。料理界にを置く者であれば、その名をらぬ者など本どこを探してもしない。宮晩餐会で総料理を務め、京都の老舗を本最峰へと押しげ、料理として唯の文化勲章候補とまで囁かれるける伝説——子玄、歳。
その髪の巨のろから、さらにい調理を着た男たちが、無言のまま然と姿を現した。
、、、……総勢名を超える料理の集団。
彼らの顔ぶれを見た瞬、黒岩の背に控えていたの板たちのから、鳴にも似たざわめきが波のように広がっていった。
「おい……嘘だろ……! あそこにいるの、座の『松乃井』の総料理じゃないか!?」
「あっちの方は、赤坂の『千代田』の板だぞ……! テレビの料理番組で審査員をやってる、あの超名たちだ!」
「なんで……なんでミシュランのを背負ってるような本トップクラスの流料理が、こんな方の料亭の通用に全員揃ってるんだよ……!?」
板たちの顔から完全に血の気が引き、昨夜までの酒の酔いなど瞬で吹きんでいた。全国の名料亭や割烹でトップを張る鎮たちが、まるで介の見習いのように背筋をピンと伸ばし、私の背に静かに列しているのだ。
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黒岩は額から吹きすや汗をで拭うことも忘れ、をパクパクと閉させながら子先を見げた。
「か、子先! 騙されてはいけません! その女は、先代がくなったのをいいことに社の座に居座っただけの、包丁も握れぬド素の娘です! 々のベテランを理尽に解雇し、今の百周記宴会を台無しにしようと——」
「黙らぬか、この浅ましき豚が」
子先のが、の朝気を切り裂く鳴のように轟いた。
その鋭利な刃物のようなに射抜かれ、黒岩は「ひっ」とい鳴をげて歩退った。
子先は底から汚らわしいものを見るような目を黒岩に向け、吐き捨てるように言った。
「もの、先代・惣郎殿の厨を預かりながら、己の腕を磨くこともせず、利権に溺れ、若い芽を摘み、挙げ句の果てには老舗の板を質に取って娘と脅しをかけるか。料理以に、としての恥をれ」
「な、何を仰るのですか! 私はこの綾瀬楼を支えてきた総料理ですぞ! 素の女などに現の何が分かるというのです!」
なおも喚きてる黒岩に対し、子先はいため息をつき、静かに首を横に振った。
「素、だと? ……貴様のような俗物には、最まで見抜けなかったというわけか」
子先は私の隣へと歩歩みると、信じられないほどい礼を尽くし、私に向かって腰を折った。
「——蒼井先。昨夜ご指示いただきました百名様分の仕込み、ごしらえの確認および器の選定、すべて完璧にいましてございます」
「あ……蒼井……せん、せい……?」
黒岩の顎がれんばかりに落ちた。取り巻きの板たちも、がを疑うように目を見張っている。
国宝と呼ばれる老料理が、代の若女将に対し、最級の敬を込めて「先」と呼んだのだ。
その景の異常さに、通用に集まった男たちののの歯が、音をてて狂い始めていた。