みかん小説
本棚

"高齢女性を後回しにした受付――絵を替える女性の正体" 第3話

田さんが来なくなった

に入っても、田さんの姿をクリニックで見かけなかった。

私は薬をもらいにくたび、空いている子に目を向けた。彼女が座ることのかった窓際の席には、別の患者が座っている。それだけのことなのに、なんとなく気になった。

あるの午、私は買い物袋を提げて田さんのを訪ねた。玄関先には、に濡れた傘が本てかけてあった。

「静子さん、どうしたの?」

「最、クリニックでお会いしないので。お元気かなとって」

田さんはし困った顔で笑い、私を居へ通してくれた。

座卓のには、薬の袋と次回の受診をいたが置かれている。薬はあと週分だという。

「かなきゃいけないのは分かっているの。でも、受付でまた何か言われるとうと、かけるのが嫌になってしまって」

彼女は湯呑みを両で包んだ。のお茶はめていた。

診察券を鞄のから探すのにがかかった、「ろの方がお待ちですからくしてください」と沼田さんに言われたこと。その、自分より遅い番号のが先に呼ばれたので尋ねたら、「順番はこちらで決めます」と返されたこと。田さんは、それを順番に話した。

「私が聞きたかったのは、どうして順番が変わったのか、それだけだったのよ。でも、い調で言われたら、それ以聞けなくて」

広告

「それは嫌ないをしましたね」

「主がいた頃なら、隣で緒に聞いてくれたとうの。今はだから、受付で言われたことがずっとに残ってしまう」

彼女は薬の袋を見つめた。

「薬をまないのはよくないと分かっているの。でも、あの所にくと、また自分が悪いことをしたみたいな気持ちになるのよ」

「次の通院に、私と緒にきませんか」

田さんは、すぐには返事をしなかった。

「静子さんまで嫌ないをするわ」

「私は丈夫です。薬が切れてしまう方が配です。それに、私も先に聞きたいことがあります。でって、帰りに買い物でもしましょう」

しばらくして、田さんは頷いた。

「ありがとう。次は緒にってもらえる?」

「もちろんです。迎えに来ますね」

帰宅してから、私は夫の写真ので田さんのことを話した。

「あなたなら、あのに何て言うかしらね。『でしなくていい』って言うのかな」

写真のの夫は、いつものように穏やかな顔をしていた。

私は、田さんが聞きたいことを次はきちんと先に聞けるよう、と鉛を用した。付き添うだけでなく、彼女が自分で話せるように伝おうとった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: