"卒業写真の空いた席" 第10話
働く所を選ぶ
席に着く、女たちは誰が何を話すかを相談した。文子は自分の経験を話すが、へ帰らなかった理由まで坂の責任にするつもりはないと言った。美代は最初の料細を見せる。澄は、自分の紹介状にかれた会社が稼働していなかったことを説する。代は、まだ契約が始まっていないので、自分が見聞きしたことだけ話す。誰かがで全員の代表になるのではなく、それぞれが自分のことを話すと決めた。
担当者は、類の確認にがかかることを最初に伝えた。すぐに結論がるとっていた女たちの顔に、失望が浮かぶ。私は「必ず解決する」と言いたくなったが、できなかった。役所の仕事には順番があり、会社の説を聞き、控除の根拠を確かめなければならない。女たちの暮らしは、類がうまで待ってはくれない。そののずれが、彼女たちを何度もにさせていた。
話しいは、職業定所のでわれた。坂商事から坂と事務員、青葉縫製から、職業定所の担当者、そして女たちが席した。私と文子は、本たちの希望で同席を認められた。
は、青葉縫製が経営難で械を止めたことを認めた。坂に寮の管理と、仕事の紹介を任せていたが、与からどれだけ引かれているかまではらなかったという。
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「紹介料は、本たちが承していたと聞いています」
「何にいくら払うのか、説されたはいますか」
職業定所の担当者が尋ねた。女たちは互いに顔を見わせた。ひとりが、細を机に置いた。
「私には、借り分だと言われました。でも、おを借りた覚えはありません」
別の女は、帰省の汽賃を会社がて替えたと聞かされ、その分が毎引かれていると言った。細の項目は同じではない。坂は、それぞれの契約が違うと主張した。
「説が分でなかった分は、確認します。すぐに全員へ返せると約束はできません」
担当者はそう述べた。労働基準監督署への相談もめることになった。坂は満そうだったが、そので女たちの仕事を打ち切るとは言わなかった。
の主任は「ここならだ」とは言わなかった。忙しい期と仕事が減る期があること、寮には決まりがあること、わないとえば職業定所へ相談してほしいことを説した。澄はその話を聞き、しだけ表をらげた。保証できないことを保証しない。その当たりの説を、彼女は初めて受けたのだった。
そのの午、職業定所は別の縫製を紹介した。寮はに併設され、与の額と費、寮費が面に記されている。過の控除分が戻るかどうかは別の問題だったが、女たちが自分で条件を見て決められる所だった。
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澄は、説を番く読んだ。から寮費と費を引くと、へ送れる額はそれほどくない。けれど、毎いくら残るかは最初からかれていた。
「ここで働くの」
文子が尋ねた。
「まだ決めてない。仕事を見てから決める」
澄は、姉の顔を見た。
「お姉ちゃんも、緒に見にこう」
は、文子にすぐ採用の返事をせなかった。彼女は青葉縫製の社員ではなく、坂が紹介した作業を転々としていたからだ。しいは、文子のこれまでの働き方を確認したいと言った。
文子はらなかった。ただ、働いた数も、できる仕事も、のに残っていないことに気づいた。自分が何をしてきたかを証するものが、元の料細しかなかった。
代は、母親と晩話しったあと、同じを見学すると決めた。母親は、娘の料をすべてへ送ってほしいという考えを変えたわけではない。それでも、まず本の元に与を渡し、必な分を毎相談することに同した。
「のことを考えて働くのは、悪いことじゃない。でも、あんたの料を、らないが勝に決めるのは違う」
母親がそう言うと、代は初めて笑った。
見学の帰り、代はののでち止まり、「ここなら働けるといます」と言った。ただし、それはそこにいるというではない。
まず1働き、料を受け取り、へ送る額を決める。そのあとで夜の学へ通えるか考える。代は初めて、自分の先のことをごとに区切って話した。
坂は、話しいが終わるに席をった。彼は最まで謝らなかった。紹介料の扱いも、個別に確認すると言っただけだった。彼がすべて悪でいていたのか、善のつもりで曖昧なやり方を続けたのか、私は今も分からない。
ただ、女たちので、もう「配はいらない」と言えるはいなかった。
帰り、澄は私に尋ねた。
「先は、私を青葉縫製に紹介してよかったといますか」
私は、返事を急がなかった。
「求票だけを見て、働く所まで見たつもりになっていた。よかったとは言えない。でも、あなたがこれから何を選ぶかは、私が決めない」
澄は、さくうなずいた。
「それなら、次は自分で決めます」