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"生活費を奪って消えた母、20年後の再会で私が頼んだもの" 第14話

伝票の突きつけと凍りついた笑顔

私はテーブルのの伝票に、静かに目を落としました。

『オマール老のテリーヌ 千百円』 『真鯛のポワレ 千百円』 『牛フィレ肉のロースト 千百円』 『特選赤ワイン(杯) 千円』 『デザート・コーヒー 千百円』 『お(サービス) 〇円』

数字の羅列を指先でなぞりながら、私は元の伝票をそっと持ちげました。 そして、母の目のへと、ピタリと突き返したのです。

「……え?」 母の眉が、審そうにピクリときました。

「お母さん。あなたが頼んだお料理の額は、ここにいてあります」 私の声は、驚くほど平坦で、え切っていました。

「……美咲? 何を言っているの?」

「そのままのですよ」 私は母の目を、瞬きひとつせずに見つめ返しました。

「私はしかんでいません。ですから、ご自分のべた分は、ご自分で払ってください」

テーブルの空気が、瞬にして凍りつきました。 窓のの煌びやかな夜景が、まるでい世界ののように褪せていきます。

母の顔から、先ほどまでの嫌な笑みが急速に剥がれ落ちていきました。

「……な、何を言ってるのよ。あなたがさっき、ごちそうするって言ったじゃない!」

「私は、『お母さんの好きなものを、好きなだけ選んでいい』と言いました」 私はグラスのを含み、喉を潤しました。

「けれど、『私が全額を支払う』とは、度も言っていませんよ」

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「屁理屈言わないでよ!」 母の声が擦り、周囲のテーブルの客が何事かと線を向けてきました。 母は慌てて声を潜めましたが、その目にはらかなりと揺が渦巻いていました。

「母親に向かって、そんな悪な言い方をするもんじゃないわ! せっかくぶりに会えた親子の再会なのよ!? しくらい母親にいいいをさせてくれたって、罰は当たらないでしょうが!」

「いいい、ですか」 私のから、乾いた笑が漏れました。

「、あのの朝。 学だった私を置きりにして、居の引きしから活費を全部持ち逃げしたときも、お母さんは同じことを考えていたのですか?」

母の息が、喉の奥でヒッと止まりました。 まるで幽霊でも見るかのように、母の瞳孔が激しく揺れきました。

「……あ、あののことは……私だって、仕方なかったのよ……」

「何が仕方なかったのですか」 私は両をテーブルので組み、歩も引かずに母を射抜きました。

「父が油まみれになって稼いできたお料を、あなたは円も残さずに鞄へ詰め込んでていった。 あのから、私たちの活がどうなったか、度でも像したことがありますか?」

母は唇をわなわなと震わせ、目を泳がせました。

「朝は、とちぎったパン半分。 夜は、具のないいお噌汁と、醤油をかけただけのご飯。

父はカレンダーの裏に料までの数をき込んで、毎朝震えるで数字を消していました。 自分は何もべずに、私にだけご飯をべさせて、『会社でべたからお腹いっぱいだ』と嘘をつき続けていたんです」

私の言葉のひとつひとつが、い鉛の塊となって母の胸を打ち据えていきました。

「かにあなたが赤い傘を持って現れた。 見らぬ男の革ジャンを抱えて、また引きしのおを奪おうとしたあののことを、私が忘れるとでもっていたのですか?」

母は顔面から血の気を引かせ、テーブルクロスを握りしめたまま、言葉を失っていました。

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